災害救援で受けるネツハラの多くは「動員」のタイミングだと思う。
何故なのか。災害は突然起こる上に、活動に派遣するスピードも速い。そのため、動員に割ける時間がプロジェクトなどに比べて極端に短い。
一、二週間で「一人でも多くの隊員と共に現地に行きたい」という気持ちのもと、動員を進める。
動員で使われる誘い文句ベスト3の
「めっちゃ感謝されるで!」
「色んな気付きがあるよ!」
「IVUSAで一番やりがいがある活動やで!」
を多用し、雑な動員になってしまうことが増える。
ちなみに、誘い文句ベスト3の裏側は、
「めっちゃ嫌な態度もされる時もあるけど、めっちゃ感謝されるで!されへん時もあるけど」
「色々考え巡らせながら作業したら、色んな気付きがあるよ!なんも考えんかったらただの重労働やけど」
「一番しんどいけど、IVUSAで一番やりがいがある活動やで!やりがい感じるかは、その人しだいやけど」
のような感じだと思う。
新規生の皆さん、耳触りの良い言葉には気を付けましょう。
「丁寧に説明して、理解してもらえるように声掛けしたらいいんですね!」
誘い手の声が聞こえてくる。
確かにそうだが、そうしたとて、ネツハラに繋がらない訳ではない。
私が災害救援へ一人でも多く動員する為に同期や後輩に片っ端から声をかけていた頃、
1年生の〇〇ちゃんにも、
「災害救援、一緒に行かん?災害系の活動に興味あるって言ってたし、被災地の今を体感することで得られるモノ沢山あると思うで」
と、LINEを送った。
〇〇ちゃんは、
「行きたいんですけど。。。 バイトがあるので厳しいです。すみません!」
と返ってきた。
バイトでは仕方がないが、もしかしたら、○○ちゃんにとっての参加することによるメリットや意義を説明すれば来てもらえると思い、
「バイトかぁ~。それは、しゃーないな。でもさ、災害救援なんて学生の内にしか中々行けへんと思わん? 社会人になって行こう思っても、中々難しいとこあるやん?それに、○○ちゃんは被災地に実際立って、色々なことを体感したくてIVUSA入ったんやろ?それを一番フレッシュに感じられるのが今やと思うねん。その機会をバイトで失うのは勿体ないなって思う。やから、バイト代わってくれる人がもしいるなら参加して欲しいな。」 と返信した。
〇〇ちゃんからの返信は途絶えた。
私と同じく動員の連絡をした同期は普通に返信が返ってきていたが。
ご飯の約束なんかもしていたが。
前から災害系の活動に興味があるという事前情報を元に、参加することによる○○ちゃんにとってのメリットを丁寧に説明し理解を仰いだつもりだった。
結果はゴリッゴリにネツハラをかまして嫌われる形となった。
そもそも、理解してもらえば参加してくれるなどおかしな話で、各々の事情や考えを無視している考えだったと反省している。理解から行動に移るには、ろ過装置に流した水が随分待たないと出てこないように、時間がかかる。
災害救援への動員がネツハラに繋がる原因は、短期間で動員するからだと思う。
短期間で動員するため、雑になる。参加へのメリットを押し付け理屈でしつこく攻めてしまう。
では、どうするか。 ありきたりだが、日頃から伝えるべきだと思う。
班ミーティング、クラブ会、オンラインイベント、ちょっとした雑談、この連載などIVUSAで活動していたら自然と視界に、耳に「災害救援」が入る努力が必要だと思う。その努力が皆さんの中でゆっくりと、だが着実に染み込み、純度の高い「災害救援に行きたい」という気持ちを生み、行動を後押しすると考えている。
そして、動員は相手に気を使いつつ、受け入れやすい形でするのが良いと思う。
ちなみに、動員の意味を調べたところ、
①戦争のため、兵士を招集すること。
②戦争遂行のために、国内の工場、あるいは資源を政府の管理下におくこと。
③ある目的のために、人・物をかき集めること。
※参照:三省堂,新明解国語辞典,第七版
と出てきた。
とても物騒な言葉でビックリ。意味は知らずに使っていたが、この言葉が持つ精神性はネツハラに繋がる動員と繋がっている気がする。
相手が受け入れやすい形にするのであれば、動員という言葉を使うのをやめて、「お誘い」などの言葉を使うのも良いかもしれない。そうすれば、より災害救援に来てくれる人が増えるかもしれない。
だが、そう思う反面、「一人でも多くの隊員と共に現地に行きたい」という気持ちでガンガン動員して何が悪いのかという自分もいる。たとえ、それがネツハラに繋がったとしても。
そもそも何故、一人でも多くの隊員と共に現地に行きたいのか。
それは、一日でも早く現地の日常を取り戻したいからだ。
現地の方々は災害が起こってからすぐに助けてほしいと思う。日常を取り戻したいと思う。もし自分だったらそう思う。
しかし、私たちは災害が起き、現地に行くまで最短でも一、二週間かかってしまう。
被災された方々にとってその期間、自分一人ではどうしようもない状況に日常を奪われ続けている。現地の方にとっての一、二週間はとてつもなく長く、苦しい。
そのため、私はせめて人手は出来る限り多く揃えて行きたいと思っている。多ければ多いほど現地の日常を早く取り戻せるから。
これらの思いから動員しているのに、何故、会員に気を使わなければならないのかと思う。 災害救援は現地のために行っているのであって、会員のために行っているのではない。
だが、ネツハラと受け取られ人手を集められなくては本末転倒なので「お誘い」がなんだかんだ一番いいのかと思う。でも.....。
「ネツハラからの脱却」などと銘打って、記事を書かせて頂いている私だが、今も「ネツハラされる側」と「ネツハラする側」の間で葛藤している。
それは、被災された方々の顔が浮かぶからだ。
=ここまでの回=
【この記事を書いた人】
横谷謙太朗
大阪東大阪クラブ、近畿大学、4年
28期減災ファクトリー西日本工場長 1年生時に災害救援活動に参加し、その現場での経験から防災・減災に目覚める。その後、防災士の資格を取得したほか、クラブでの減災事業の実施などに取り組んできた。 好きな歌手誰?と聞かれた時に本当はスガシカオだが、それではハネないのでKing Gnu と答えがち。
※減災ファクトリーとは
①減災についての知識を持つ人をどんどん生み出していく場
②子ども向け防災プログラム実施を形にしていく製作所
という2つのメッセージが込められたチームです。
様々なコンテンツやイベントを設置しながら、“減災”の考えと行動の普及を目指して活動しています。
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