「ネツハラ」にご用心 Vol.001~はじめに~


「ネツハラからの脱却」では、減災ファクトリー(※)西日本工場長の横谷謙太朗が災害救援の経験や感じたこと、減災を考えるキッカケになったもの、思い付いたことを綴っていきます。


連載に至った経緯ですが、災害救援の誘いを受けた際に「現地のために頑張ろうや!」や「とりあえず来て!」などネツハラ(熱意ハラスメント)を受けた記憶はないでしょうか。

私はされた記憶しかありません。  


にもかかわらず、学年が上がるにつれ私もネツハラをしていました...。

自分がされたことのなど忘れ、“災害には人手がいる”その考えが突っ走ってしまいました。

そう思い返すと、ネツハラの原因は伝えることが不十分ということではないでしょうか。 


なぜ今動かなきゃいけないのか。 

なぜ私たちが必要なのか。 

なぜ、動いてほしいのか。

なぜ、私(誘う側は)は動くのか

といったことがちゃんと伝わっていないのです。 


災害救援は“災害”を呼び水に様々な社会問題が噴出した現場での活動です。

知らない感情を持った人々と接する活動とも言えます。所謂、非日常です。

私が思うに、このような環境を皆さんはIVUSAに求めているのかなと思っています。

私は非日常に触れた経験がIVUSAを4年間続けている理由です。

このような経験や感じたことを伝え、相手の判断材料を増やしてあげることがネツハラへの対処法だと考えています。 


連載はネツハラからの脱却を目指し、たかが一人の経験ですが、その一人の経験を通して、読んだ皆さんにとって「自分だったらどう感じるか」などを追体験しながら「どう災害と向き合っていくか」を考えるキッカケとなればと思います。 



【第1話 横谷、初災害救援で半泣き】 

朝8時頃、作業現場に入った。

この時、8時間のバス移動の疲れにより既に帰りたかった。バイトを休んでまで来たことを早くも後悔。


作業前、松岡修造ばりに熱い先輩に、「自分の家やと思ってやりや」と檄を飛ばされた。

その熱量は私の疲れを倍増させた。それと同時にそのくらい丁寧に作業をしろという解釈をした。 


作業現場のお宅は既に床が剥がされており、床下には土砂が図々しく存在していた。 

作業はお宅を汚さない為に養生シート(半透明な大きいフィルムの端に養生テープが付いているもの)で動線を保護することから始まった。 


10時頃、動線全ての保護が終わり、土砂を取るべく床下に潜り始めた。

潜って最初に、「くぅっさ」 

土砂はヘドロっぽく、ザリガニのような臭いがした。 

掻き出してみると重い。水分を含んでおり、想像の3倍重かった。  


ただ、乾いていたら軽くてラッキー! 

と、いう訳ではない。

乾いた土砂は焼き物のように固く、私のスコップと心をへし折った。

また、暑い。 

気温は30度以上あった上に床下に風が通ることもない。恐らく、ひと夏分の汗をかいた。 

作業が過酷であるほど、休んだバイトが頭の中でチラつく。そして、作業時間を時給で換算してしまい「給料出へんかな~」なんて思ってしまう。  


しかし、この環境に屈しない人間が隣にいる。修造だ。 

熱く爽やかなその姿。体感温度が上がるのは勘弁してほしいが、共に作業を進めると自分の気持ちが高まり、丁寧に作業をこなすことができた。 


12時頃、お昼休憩の時間。 作業を共にした学生とご飯を食べながら、「臭いきっつ!」やら「暑すぎ!死ぬ!」など愚痴をこぼしている時だった。 

近くにいた、現地のおっちゃんがボソッと、つぶやいたのです。 

 ⇒つづく




この記事を書いた人

横谷謙太朗 

大阪東大阪クラブ、近畿大学、4年

28期減災ファクトリー西日本工場長 

1年生時に災害救援活動に参加し、その現場での経験から防災・減災に目覚める。その後、防災士の資格を取得したほか、クラブでの減災事業の実施などに取り組んできた。 好きな歌手誰?と聞かれた時に本当はスガシカオだが、それではハネないのでKing Gnu と答えがち。 


※減災ファクトリーとは 

①減災についての知識を持つ人をどんどん生み出していく場 

②子ども向け防災プログラム実施を形にしていく製作所 

という2つのメッセージが込められたチームです。

様々なコンテンツやイベントを設置しながら、“減災”の考えと行動の普及を目指して活動しています。  

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