この度の大雨による被害に遭われた皆様へ、心よりお見舞い申し上げます。
大雨により被災された住宅の片付けの手順を下記の通りまとめました。
一人でも多くの方の目に留まり、自宅の片付けなどのお役に立てればと存じます。
【心がけたい6つのポイント】
■住宅の復旧は長期戦
浸水被害にあった場合、住宅を乾燥させることが非常に重要です。
この乾燥には、1か月程度必要だといわれています。壁の内部や床下に湿気が残っていると、家が傷んでしまったり、カビや悪臭の原因になってしまい、健康被害を受けてしまう場合もあるためです。
(カビてしまった床材)
また、周辺の住宅なども被災していると、畳屋さんや大工さんなども手一杯となり、数か月以上時間がかかる場合があります。長期期間にわたると、心身共に疲労が溜まり、体調を崩してしまう恐れもあります。片付け作業は、焦らず、自身の心身の声に耳を傾けながら行いましょう。
■家族だけで片付けるのは大変です。親戚や友人、ボランティアにも頼りましょう
浸水被害の片付けは、重労働で、時間もかかり、とても大変です。 近くに親戚や友人がいる場合は、思い切って頼ってみましょう。
また、自治体によっては、社会福祉協議会等が窓口になって、災害ボランティアセンターが開設されます。
ボランティアは、一般的に家具の移動や、畳の運び出し、泥の除去、雑巾がけなどの掃除など、人手が必要となることを一緒にお手伝いさせていただきます。
誰かと一緒に片付けを行うと、片付けがはかどるだけでなく、会話をすることでストレス発散になったりもします。困ったときはお互い様ですので、一人で抱え込まず、ボランティアを含め周辺の人に頼りましょう。
■被害の状況を写真に撮っておきましょう
公的な支援を受けたり、保険金を申請したりするために、被害状況がわかる写真が必要になる場合があります。 浸水の高さや、廃棄しなければいけなくなった家具や家電などがわかるように、写真を撮っておきましょう。
撮影は携帯電話やスマートフォンでも大丈夫ですが、自分で思う3倍くらい、多めに撮っておくのがおすすめです。撮影時には以下のポイントもおさえておくとよいでしょう。
・建物の外観を4方向から
建物全体が写るように、4方向から写真を撮ってください。特に浸水の高さによって受けられる支援や保険の補償の内容が変わるため、どの高さまで浸水したのかがわかるように、メジャーを一緒に写したり、高さの目安がわかるものを一緒に写すなどするとよいです。屋外に設置しているエアコンの室外機、給湯器なども撮っておきましょう。
・部屋ごとに室内の様子も
室内の被害状況もわかるように写真を撮りましょう。この時も浸水の高さがわかるように写真を撮っておきましょう。キッチン・風呂場・トイレなども忘れずに。
・家具や家電、自動車など
加入している保険の内容によりますが、家具や家電、衣類なども補償される場合があります。そのため、廃棄する前に、写真を撮っておきましょう。また、自動車も自動車保険により補償される場合があります。
■被災後に購入したもののレシートは念のため保管を
こちらも保険を申請するために必要になる場合があります。なにが補償の対象となるかは保険内容によるため、家具や家電、衣類、保険申請のための写真の印刷代など、できるだけすべてのレシートを保管しておきましょう。
■被災後、ブレーカーが落ちていた場合、漏電に注意
漏電など電気設備が故障していると、感電や火災を引き起こす危険性があります。 そのため電力会社や電気工事業者に相談しましょう。
■罹災証明書を申請しましょう
被災後、しばらく経つと、自治体が罹災(りさい)証明書発行の申請受付を開始します。 罹災証明書は、住宅の被害の程度を証明するものです。被害の状況に応じ、公的支援(被災者生活再建支援金など)が受けられたり、税金・公共料金・保険料などの減免を受けられる場合があります。
【自宅を片付ける際の手順について】
ここからは、実際に自宅を片付ける手順についてご紹介します。 住宅や地域ごとに状況が異なりますので、実情に合わせていただければと思います。
まず、大まかな片付けの流れとしては、
(1)貴重品や大切なものを確保する
(2)片付けの計画を考える
(3)必要なものを用意する(ゴミ袋、雑巾やタオル、飲み物、スコップ、バケツなど)
(4)家具や泥などを一時的に置ける屋外スペースがある場合は、屋外スペースを片付ける
(5)屋内の移動がしやすいように通路を確保する
(6)廃棄する家具・家電等を屋外に移動する
(7)濡れて困るものや、再利用できるものなどは屋内などにスペースを作って保管する
(8)床上に泥や土砂がある場合は除去する
(9)畳がある場合は、屋外に移動する
(10)床上浸水の場合、必要に応じて濡れた壁材を除去する
(11)床下に泥や水が溜まっていた場合、泥や水を除去し、洗浄、消毒する
(12)乾燥させる
(13)工務店等に修理してもらう
ここからは具体的にご紹介します
(1)貴重品や大切なものを確保する
水に流されてしまっていたり、泥の中に埋まってしまっていることもありますが、まずは貴重品や大切なものを引き出しなどから出しておきます。 このあと、間違って廃棄するものと一緒にしてしまうと、戻ってきません。 また、思い出が詰まったものなどを、片付けをしている最中に見つける場合もあります。あせらずに片付けましょう。
(2)片付けの計画を考える
特に自宅の2階などで生活をしながら、片付けを進める場合、どこから片付けるのかあらかじめ考えましょう。生活に必要な水回りやキッチン、食事をとったり休むスペースや、物を置いておくスペースなどを決めます。
また、計画を考えておくと、お手伝いに来ていただいた親戚・友人・ボランティアに、どこをどのように片づけてほしいか伝えることもスムーズになります。
(3)必要なものを用意する(ゴミ袋、雑巾やタオル、飲み物、スコップ、バケツなど)
片づけをするにあたり、必要になるものを用意します。 下記は最低限必要になるものの一例です。
【服装】
・マスク(カビがなければ一般的な使い捨てマスクで大丈夫)
・手袋(破けづらい厚手のゴム手袋や、皮手袋)
・汚れていい服 ・長靴 【片付け】
・物を保管しておくための箱やケース等(雨に濡れない場所に保管するものは段ボールなどでも)
・ゴミ袋 【土砂や泥の除去】
・スコップ・シャベル類
・バケツ(泥を入れるため)
・一輪車(泥をためておく場所まで距離がある場合)
【洗浄(清掃・掃除)】
・雑巾やタオル(拭き掃除をするため。かなり多く必要です) ※左官用のスポンジなども便利です
・バケツ(雑巾などを濡らす水をためるため)
・ブラシ類(毛が硬めのもの。固まった泥や、細かなところに入った泥や砂を除去するため)
・洗剤(食器などを洗う際)
【消毒】
・消毒液(オスバンSという商品などがよく使われています。必ず薄めて使いましょう)
・雑巾(薄めた消毒液を浸して、拭きます)
・噴霧器(床下の消毒に便利です。ホームセンターの園芸用品売り場に、手動のものなら1,000円程度で売っています。)
(4)屋外スペースを片付ける
家具や泥などを一時的に置ける屋外スペースがある場合は、まず屋外のスペースを片付けると、その後屋内から移動させたものを置きやすくなります。 また、廃棄するものについては、種類ごとにどこに置くのか決めておくと、あとで集積場に持っていく際に、改めて分別をする必要がなくなります。
廃棄する畳は、平らな場所に重ねておいておくと、スペースが最小限で済み、あとでトラックなどに積むときに楽になります。 また、衣類や本などの比較的小さなものは、箱や段ボールに入れておくと、あとで運搬するときに楽です。
また、あとでトラックなどに積んで運搬する場合は、車が横付けできるところに重たいものや大きなものを置くと、積み込むときが多少楽になります。
(5)移動がしやすいように通路を確保する
泥や土砂があると、足場が悪く、転んで怪我をしてしまうかもしれません。 また、歩きづらいところで片づけをしていると、より疲れやすくなってしまいます。 そのため、屋内外問わず、歩きやすいように通路を確保します。
(6)廃棄する家具・家電等を屋外に移動する
屋外のスペースや通路が確保できたら、廃棄する家具や家電などを屋外に移動します。 出入り口に近い部屋等から移動させると、徐々に通路などが広くなります。
・プラスチック製、木製、金属製、陶器
洗浄・消毒・乾燥させることで再利用できるものもあります。
・エアコンの室外機等、一部電化製品
適切に清掃・乾燥などすることで、再利用することが可能な場合もあります。
・写真やアルバム
洗浄・乾燥などすることである程度劣化を防ぐことができます。
すぐに洗浄できない場合は、1枚ずつ(1ページずつ)乾燥させます。洗浄はぬるま湯(20~30℃。夏は常温の水で可)に浸し、指の腹ややわらかい刷毛などを使って、やさしく泥を取り除き、その後きれいな水ですすぎます。乾燥は洗濯ばさみなどを使って、1枚ずつ陰干しします。
流水で洗浄すると写真の塗料がはがれてしまう可能性があるので、桶に張った水を使いましょう。
早く片付けようと焦り、家具や家財などを廃棄し、その後「捨てなければよかった」と後悔されてしまうことがあります。畳など明らかに再利用できないもの、不要なもの以外は、落ち着いて考えましょう。 また、自治体ごとで分別が違うため、自治体のホームページなどで確認しましょう。
(7)再利用できるものなどを保管するスペースを確保する
屋内外のものを移動していくと、残しておきたいものが出てきます。そういった再利用できるものや、濡れたり汚れたりすると困るもの、新しく購入したものなどを保管するスペースや部屋を決めましょう。
(8)床上に泥や土砂がある場合は除去する
ある程度物を移動し、床上に泥や土砂がある場合除去します。やわらかい泥の場合、足を取られたり、滑ってしまうため、物の移動を行いながら除去をした方がいい場合もあります。 水害時の泥は不衛生なため、ゴム手袋などをして行います。
また、乾いて粉塵が舞う場合は、吸い込んでしまわないようにマスクなどで鼻や口を覆います。 やわらかい泥や土砂で、平らな場所の場合は、角形スコップが便利です。硬い泥や土砂の場合は剣先スコップが便利です。 泥の除去はとても体力が必要になります。お知り合いの方に手伝ってもらったり、ボランティアセンターにボランティアの派遣を依頼しましょう。
泥や土砂は、土嚢袋に入れて廃棄する場合と、入れない場合があります。自治体ごとによって対応が異なるため、お住まいの地域ごとに確認しましょう。
(9)畳がある場合は、屋外に移動する
濡れて水を含んだ畳は再利用が困難と言われています。また、長い時間放置しているとカビが発生してしまいます。そのため、早めに屋外に移動させましょう。 ただ、濡れた畳は大変重く、1枚運ぶために、数人必要になります。そのため、こちらも知人やボランティアに協力を依頼しましょう。
(10)床上浸水の場合、必要に応じて濡れた壁材を除去する
屋内の壁(特に屋外と接する部分)は、壁紙の下に石膏ボードと断熱材が入っていることが多いです。石膏ボードと断熱材は水分を含みやすく、濡れたままにしてしまうと、カビや悪臭の原因になります。
目立たない場所(タンスや棚を置く場所等)に小さな穴を開けたり、コンセントカバーを外して、確認します。コンセントカバーを外す際は、ブレーカーを落として行います。
<石膏ボードが入っているか確認する方法>
壁に画びょうなどを差し込み、引き抜きます。画びょうの針に白い粉がついていると、石膏ボードが入っていていることがほとんどです。
<壁材を取り除く方法>
最低限必要なものとして、カッターナイフ、ドライバー、バールがあれば取り除けます。 浸水した高さから10数センチ上の高さを目安に、カッターナイフで床と水平に切り込みを入れます。1度切り込みを入れると壁紙は簡単に剥がすことができます。
石膏ボードはビス(ねじ)でとまっているため、ドライバーなどでビスを外します。壁紙を取り除いた高さに合わせて、カッターナイフで同じところを繰り返し切り込みを入れます。1㎝程度の深さまで切り込みを入れると、石膏ボードも外せます。石膏ボードは、1枚のボードの半分未満の高さまでが濡れている場合は、半分の高さより少し下で取り除きます。半分以上濡れている場合は1枚分剥がします。
また、石膏ボードの下には、断熱材が入って(特に屋外と面している壁)おり、グラスウールという繊維質のものか、スタイロフォームという発泡スチロールの板のようなものが一般的です。グラスウールの場合は、水を含んでいる部分をカッターなどで切り取ります。スタイロフォームの場合、洗って乾燥させることで再利用できることがあります。
(11)床下に泥や水が溜まっていた場合、泥や水を除去し、洗浄、消毒する
床下の地面には2種類あります。布基礎と呼ばれる土のものと、ベタ基礎と呼ばれるコンクリートのものです。
※布基礎の場合でも、床下の地面がコンクリートで覆われている住宅もあります。
※床下の地面の上に、湿気を防ぐためのシートが貼ってある場合があります。 基本的には不衛生な泥で、水分を多く含んでいるため、できる限り除去をした方がいいです。
泥や水が入っているのかを確認するには、以下の方法があります。
①床下収納や床下点検口から確認する
②家の外周基礎部分の通気口から確認する
(暗いので懐中電灯などで照らします。細くて長い木の棒(枝など)などを差し込み、泥や水の有無が確認できます)
③和室の場合、畳を上げ、床板を1枚外して確認する
(無垢の材木で腐食していなければ、床板は再利用できることが多いです)
水(泥水)が溜まっている場合は、ポンプなどを使って水を抜きます。浸水被害にあってから数日しても水が溜まっている場合は、そのままにしても水は抜けません。
電動のポンプは、安いものでも1万円程度はしますので、お知り合いの方に借りるのも手です。また、土や砂を多く含む泥水は、一般的なポンプでは吸い出せない場合があります。その場合は、布などでろ過しながら吸い出すか、業者に依頼するか、バケツや塵取りなどを使って手作業で汲み取ります。
床下に泥が溜まっていることが確認された場合、泥の除去を行います。
<和室の場合>
畳をあげ、床板を上げます。床板は多くの場合釘が打ってあります。釘は釘抜などを使うことで抜くことができます。 無垢の床板は再利用できることが多いため、あらかじめ油性ペンなどで番号をふり、元の並び順がわかるようにして外します。
和室が複数ある場合、どの床板が、どの部屋のものだったのかわからなくならないように、部屋の方角や床板を並べる方向がわかるようにします。
<フローリングの場合>
フローリングが浸水により波打ったり、傷んでいる場合は再利用できないことがほとんどです。フローリングを外す場合は、丸鋸などが必要になるため、工務店(大工さん)などに見てもらうのがいいでしょう。 床下点検口などがある場合は、そこから床下に潜って泥出しをすることも可能です。
<洗浄>
布基礎(土の基礎)の場合は、基本的に洗浄しません。泥を除去したのち、木材(束柱、大引き、根太など)を乾かした後、ブラシなどで乾いた泥を落とします。
ベタ基礎(コンクリートの基礎)の場合は、水を流して洗浄するとよりきれいになりますが、また水がたまることになりますので、ポンプなどの排水方法がある場合に行います。
<消毒>
泥を除去したのち、消毒を行います。消毒液は「オスバンS」という商品名のものが広く使われています。
ドラッグストアなどで販売されており、必ず希釈して使います。床下の消毒の場合100~200倍に薄めます。 床下を消毒する場合は、噴霧器を使用すると効率的です。噴霧器は、ホームセンターの園芸用品コーナーにあり、手動のものなら1,000円程度で手に入ります。
木材や家具などを消毒する場合は、薄めた消毒液に雑巾などを浸して、絞り、それで拭いて消毒します。
(12)乾燥させる
泥の除去、消毒まで行ったら、あとは乾燥させます。木材などには見た目以上に水分を含んでおり、乾燥のために1か月程度必要だと言われています。 泥の除去のために床板を上げた場合は、可能な限り床板を上げたまま、扇風機やサーキュレーターなどを使って、乾かします。 床板を上げていない場合は、床下点検口などから扇風機などで空気を送ります。
できれば、対角の位置にも穴があると乾燥が早まります。数千円から数万円の費用は掛かりますが、工務店などに依頼して点検口を作ってもらうこともできます。
(13)工務店等に修理してもらう
乾燥まで終わったら、必要に応じて工務店などに修理してもらいます。 災害時はどこの工務店も忙しくなり、数か月待ちになることも少なくありません。修理までの生活スペースの確保ために、ホームセンターでコンパネ(厚手のベニヤ板)などを購入し、床に敷くことも1つの方法です。
わたしたちについて
80大学3,600人の大学生が所属するNPO法人「国際ボランティア学生協会(IVUSA)」です。日本最大規模の学生ボランティア団体として、国際協力、環境保護、地域活性化、災害救援、子どもの教育支援の 5つの分野で様々な活動を実施してきました。
災害救援においては20年以上の経験や学生のマンパワーを最大限に活かし、「すべては被災された方のために」という信条のもと、瓦礫の撤去や家屋の片づけ、炊き出し、防災訓練のお手伝いなどの活動をしています。地震・津波・水害・豪雪・噴火・竜巻災害など66の災害に対し、36都道府県100市区町村に於いて計250回以上活動してきました。
この記事を書いた人
IVUSA危機対応研究所 主任研究員 深山 恭介
IVUSA17期卒。関西事務所勤務。 災害救援活動、ロジスティックス、危機対応講習を担当。 プロジェクトでは阿蘇海環境づくり活動、雪原カーニバルなかさと協働活動、インド生活支援活動を担当。
0コメント