組織マネジメント入門Vol.005 坂道グループに学ぶチームビルディングのポイント

    

 

坂道グループ(坂道シリーズ)とは、乃木坂46、欅坂46、日向坂46、吉本坂46の4アイドルグループの総称のことです。デビューの順番は、乃木坂(2012年)→欅坂(2016年)→吉本坂(2018年)→日向坂(2019年)です。今回は吉本坂46の話は出てこないのでご了承ください。プロデューサーは言わずと知れた秋元康氏。

これらのグループは、IVUSAの学生と同年代の女の子たちが、「チーム」としてパフォーマンスしているので、そこからチームビルディングやマネジメントについて学べることがあるのではと考え、このような記事を書きました。 


もちろん彼女たちは数万~十数万人がエントリーするオーディションを経て選ばれ、ボランティア活動ではなく歌やダンス、握手をするのが仕事なわけですからIVUSAと全然違います。 ただ、プレッシャーや人間関係などで悩みつつも、自分たちのグループを多くの人たちに知ってもらおうと努力しているという点では共通しているところもあります。

自分がチームをまとめる立場に立ったらと想像しながらぜひ読んでみてください。


初めにお断りしておきますが、これから書くことはIVUSAの公式見解というわけでは全くなく、学生と職員数名でこのテーマについて話し合った内容をまとめたものです。これを読んで、「言いたいことがある!」という方がいれば、ご意見をお待ちしています。


<学べるんじゃないというポイント>  

1.チームの理念(コンセプト)の大切さ 

2.リーダー(キャプテン)とセンターの分業、チームに必要な役割分担やキャラクター 

3.競争原理の適度な導入 

4.キャプテンやセンターの継承とその難しさ 






1.チームの理念(コンセプト)の大切さ

(皆さんならどんなチームを目指しますか?) 


明確な言葉として定義されているのが日向坂の「ハッピーオーラ」。これはファンや見ている人を幸せにしたいというもので、爽やかな楽曲や可愛らしい衣装、そして笑顔やグループ内の仲の良さという形で表れています。 


欅坂はメッセージ性の強い楽曲やパフォーマンスを発信するという目的にフォーカスしているようです。先行する乃木坂と差別化する意味でもクールさが強調されており、衣装も(批判もあった)軍服調のものやレザーが多いのが特徴です。ちなみに秋元康氏は欅坂のコンセプトについて、「大人たちに支配されない」と語っています。 


乃木坂は「清楚」がコンセプトだと言われていますが、オーディションではいわゆる「お嬢様」だけでなく、「暗い過去を持つ少女」(具体的にはいじめられた経験がある人)が選ばれたと言われています。 


ただ、乃木坂は「AKB48の公式ライバル」として設立されたため、コンセプトの原点は「AKB(48グループ)との差別化」であり、その中身については欅坂や日向坂ほど明確になっていない印象です。 逆に言えばその分、多様性があり、憧れとなる対象のバリエーションが多いのかもしれません。 


欅坂の冠番組である『欅って書けない?』のMCをしている土田晃之さんは3グループを3姉妹に例え、「学校のマドンナである長女の乃木坂、元気いっぱいの末っ子の日向坂、やや不登校気味の次女の欅坂」と表現しています(2019年11月17日放送ラジオ番組『土田晃之 日曜のへそ』ニッポン放送)。


ちなみに秋元康氏は「売れるためのコンテンツ」にはコンセプト、つまり企画全体を貫く統一的な基調(トーン&マナーともいう)やイメージが重要であることを昔から協調していました(1986年発行『SOLD OUT!!』扶桑社)。



2.リーダー(キャプテン)とセンターの分業、チームに必要な役割分担やキャラクター

(あなたのチームには、どんなタイプの人たちがいたら上手くいきそうでしょう…?そのタイプに当てはまる人の顔も思い浮かべてみてください) 


AKBでも最も人気があり、対外的にグループの顔となる「センター」(前田敦子さん)と、グループをまとめ、引っ張る「キャプテン」(高橋みなみさん)の役割分担は有名でした。 高橋みなみさんは48グループの「総監督」として大所帯をまとめた経験から『リーダー論』(講談社)という本も書いており、実践的なノウハウやスキルがたくさん紹介されているので、IVUSAでマネージャーやる人にはおススメです。 


キャプテン(リーダー)のあり方については、2019年3月にNHKで放送された「坂道テレビ」で坂道グループのキャプテンの対談が参考になります。乃木坂の桜井玲香さんと欅坂の菅井友香さんは、高橋みなみさんのように全体を引っ張るキャプテンを目指したが自分には無理だと気付き、「後ろからみんなを支える」ようなキャプテンを目指しています。 


一方で、日向坂の佐々木久美さんはワンピースの「ルフィ」のようなキャプテンが理想だと言います。「ルフィって普段はみんなとふざけてるけど、一番強いし、締めるときは締める。普段からしっかりしてる必要ないんだなって、ルフィを見て思うようになりました」(インタビューより)  


普段はふざけていたり、いじられキャラ扱いされていたりしても締めるところは締めるというのがキャプテンのあり方として共通していそうですね。



以下、センターとキャプテンの他に、チームにどんなキャラクターが必要か考えてみました。 


■メンター(相談役)的な人 

日向坂で言えば井口眞緒さん。いろいろあって今年の2月に卒業を発表したのですが、他のメンバーが書いたブログを読むと、いかに彼女が一人ひとりのメンバーに寄り添い、励ましていたかが分かります。中でも潮紗理菜さんが井口さんの卒業に寄せて書いたブログは涙腺崩壊必至です。


欅坂で言えばキャプテンの菅井友香さんがこの役割を兼ねていて、副キャプテンで「鬼軍曹」の異名を持つ守屋茜さんが全体を引っ張る役割を持っています。


乃木坂で言えば、卒業した生駒里奈さんや若月佑美さん。ライブで積極的にMCを務めるなど、元キャプテン桜井玲香さんを影だけでなくステージ上でも支えていた様子がうかがえます。  


■マスコット的な人

要は「愛されキャラ」であり、「いじられキャラ」。いるだけで雰囲気が明るくなる人。 日向坂で言えば河田陽菜さんや丹生明里さん。乃木坂で言えば、星野みなみさんや与田祐希さんが当てはまります。欅坂で言えば尾関梨香さんや、卒業してしまいましたが織田奈那さん。例えば尾関さんは、「走り方が気持ち悪い」ことや、某芸能人の狂気的なモノマネなどが話題になり、いじられキャラが定着しました。  


■異分子(オルタナティブな存在)

グループの現状に満足していない人。野心を持った人。

日向坂で言えば齊藤京子さん。日向坂の前身であるけやき坂(欅坂のアンダーグループ的な位置づけ)時代から改名(独立)をメンバーの中で最も強く望んでいたと言われており、現在も日向坂が「ただ仲のいいグループ」でとどまることなく、一人ひとりがもっと個として強くならないといけないとインタビューで語っています(『セルフ Documentary of 日向坂46』)。  


欅坂で言えばやはり今泉佑唯さんだったでしょう。欅坂はセンターがずっと平手友梨奈さん固定で、その弊害が様々な形で指摘されていましたし、今年の1月にはその平手友梨奈さんが脱退してしました。残念ながら、自らもセンターを目指していた今泉さんは平手さん一強のグループからはじき出されるように(この辺りは諸説あり)、2018年11月に卒業しました。 


乃木坂で言えば、2期生の寺田蘭世さんではないでしょうか。「不遇」といわれる2期生の中でも1期生へのリスペクトと、表題曲でのセンターになりたいという目標を諦めず、ライブやバラエティーに取り組む姿がブログやドキュメンタリー映像、雑誌のインタビューなどから随所にうかがえます。  


自分たちのチームにどんなキャラクターがいて、足りないのは何なのかを考えるきっかけにしてはいかがでしょうか。 





3.競争原理の適度な導入

(あなたのチームには競争はありますか?それはチームの関係性にどのような影響を与えているでしょう?) 

AKBをはじめとする48グループは競争原理をかなり強く導入していました。それが「選抜」や「総選挙」と言われるものです。非選抜メンバーを応援するコアなファンを作り、更に自分たちの力で推しメンを選抜へ押し上げるこのシステムは、多くの批判もされましたが極めて画期的かつイノベーティブなものでした。サブスク全盛で、楽曲やMV(ミュージックビデオ)にネットで簡単にアクセスできるこのご時世で、CDがこれだけ売れるのは驚異的と言わざるを得ません。


2019年のシングル売上ランキングの上位1~5位をAKB、乃木坂、欅坂が独占。上位25位の内、48グループと坂道グループの曲が合わせて15曲入っています。 



ゴールデンボンバーのシングル『CDが売れないこんな世の中じゃ』 

「CDの総売り上げ全盛期の1/3、景気がいいのAKBだけ~♪」  


それに対して、坂道グループはそこまでの競争的要素を入れていません。乃木坂は選抜制がありますが、選抜メンバーは「運営」によって選ばれていますし、欅坂・日向坂は選抜制そのものを取っていません。今年の2月に「坂道研修生」と言われるメンバーが各グループに配属されるという時も、日向坂のファンの多くは「選抜になると嫌だから、大人数は来ないで欲しい」と言っていました。  


ただ、乃木坂も初期の頃は初劇場公演「16人のプリンシパル」(2012年)のように、自己PRによる選抜をしていました。  


この様子はYoutubeで見ることができますが、皆さんも一発芸や自己PRを振られた時の参考になると思います。橋本奈々未さん(ロケ弁欲しさにオーディションを受けて、弟の学費が貯まったので辞めた人)のクレバーさが際立っていました。 また、競争原理と相性が悪そうな日向坂でも楽曲のフォーメーションの〇列目というような「序列」は存在しています。 


その結果か分かりませんが、AKBには「大島優子は好きだけど、前田敦子は嫌い」というファンが結構いましたが、坂道グループのファンにそういった「○○は好きだけど、△△は嫌い」という人は少ないようです。 さらに言うと、坂道グループは競争というよりは、一人ひとりの自己実現にフォーカスがあたっているのではないでしょうか。競争的要素はスパイス的に入れていくのが、今のチームビルディングのポイントなのかもしれません。  




4.キャプテンやセンターの継承とその難しさ

(あなたのチームを誰に、どのように引き継いでいきますか?) 

女性アイドルの全盛期が3~4年程度だったものを、メンバーの入れ替えで持続可能なものにしたパイオニアはモーニング娘。だったと思いますが、それを一つの「システム」、さらには「ムーブメント」として確立させたのがAKBでした(AKBがデビューしたのは2005年12月)。


当然、ここで「引き継ぎ」(継承)が問題になってきます。デビュー後一年余りの日向坂や、前述のようにセンターを固定し過ぎてゴタゴタした欅坂を考えれば、ここで参考になるのは乃木坂でしょう。 

乃木坂のセンター継承のポイントは「抜擢」です。 



6thシングル『ガールズルール』白石麻衣(1期生) 

それまで5作連続で生駒里奈さんがセンターを務めていましたが、初のセンター入れ替わりとなりました。


7thシングル『バレッタ』堀未央奈(2期生) 

当時加入直後で全く知名度のない2期生メンバーからの抜擢で大きな話題となりました。


8thシングル『気づいたら片思い』西野七瀬(1期生)

この曲のセンターをしたことで人気が急上昇。それ以降西野七瀬さんは9、11、13(Wセンター)、17(Wセンター)、19(Wセンター)、22枚目シングルでセンターを務めました。 


10thシングル『何度目の青空か?』生田絵梨花(1期生) 

大学受験のために活動を一時休止していた生田絵梨花さんの復帰直後の抜擢でした。生田絵梨花さんの美声が取り上げられるようになったのもこの曲がきっかけです。 


15thシングル『裸足でSummer』齋藤飛鳥(1期生) 

これまで、白石麻衣さんと西野七瀬さんが2強だった乃木坂46の新しい顔として、この曲をきっかけに齋藤飛鳥さん人気が急上昇しました。 


18thシングル『逃げ水』大園桃子・与田祐希(3期生) 

3期生からいきなりのダブルセンター抜擢で乃木坂に新しい風を吹かせたシングルとなりました。 


24thシングル『夜明けまで強がらなくてもいい』遠藤さくら(4期生) 

4期生加入直後の抜擢。遠藤さくらさん以外にも4期生の2名が選抜入りし、乃木坂46にとって次世代のスタートと言えます。  


このように、「抜擢人事」を定期的に行うことで、グループに刺激を与え、新陳代謝を加速させています。  


IVUSAの場合、学生は4年で卒業し、一年ごとに運営するメンバーが入れ替わるので強制的に新陳代謝は行われています。一方で、事実上学年縛りの役職があったり、キャリアラダーのステップが固定化されたりしていて(この研修をこの順番で受けないといけない)、「エスカレーター」感が強くなっています。  

抜擢人事かどうかは分かりせんが、「新しい風」を入れていくことがIVUSAにも必要ですね。  





いかがだったでしょうか。 

かなりオタク色全開で引かれた方もいるかもしれません(それでも構いません)。  


他にも、ももいろクローバーZや漫画『キングダム』など、取り上げて欲しいというリクエストがあるので、シリーズ化できればしていきたいと思います。 




 【この記事を書いた人】 

最後にまとめたのは事務局の伊藤ですが、最初にも書いたように職員と学生数名による共同執筆です。 

伊藤 章・大坪 英里奈 ・湯田 舞 ・三浦 慎爾・林 幹太・立和田 優花 

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