こんにちは、神奈川白楽クラブ4年の髙橋諒です。
突然ですが、みなさんは「理想の組織」に何を求めるでしょうか。成長できるストイックさ?それとも楽しくやれる緩さ?
その答えに正解はありませんが、今回テーマにしたいのが「ファミリー体質な組織」です。一見すると面倒見が良さそうで明るく団結力があるように思えますが、常に馴れ合いを生み出す可能性もあります。そこで注目したのがプロ野球の東京ヤクルトスワローズ(以下ヤクルト)です。
球界随一のファミリー球団として長年愛され続けるヤクルト。その仕組みについて知れば、4月から本格的に始まるクラブ運営や班運営に生かせるかもしれません。
◆お品書き◆
1. ファミリー体質の正体
2. 緩さと厳しさのバランス
3. まとめ
『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』
(長谷川晶一 集英社)
今回はこの本をもとに、読み解いてみたいと思います!(太字で書いてあるのは、この本からの引用です)
1.ファミリー体質の正体
まずは、ヤクルト独特の「ファミリー体質」について知らなくては話を進めることができません。
①選手、②監督・コーチ、③ファン、④フロントの4つの立場から、ファミリー体質なヤクルトについてどう考えているのかをまとめてみました!
①選手
“ファミリーな感じだけど、球場に入るとオンとオフがはっきりしている。(山田哲人選手)” “仲良し集団でも結果を出すことが大切だと思う。(石川雅規選手)”
“ぬるま湯のように見えるけど、野球に対しては意識が高くて、すごく真面目。(雄平選手)”
ファミリー体質の弱点として「負けてもしょうがないよね」といった馴れ合いがあります。選手はそれを理解しながら、プロの選手としてオンオフを使い分けたり、結果をだすことを意識したりと、ストイックに野球に打ち込むことでカバーされていると感じました。元が明るいチームだからこそ、ファミリー体質を楽しみながら真摯に野球ができる環境にしやすかったのではないでしょうか。
②監督・コーチ
“現場とフロントとの距離感が近い。みんながフランクに話し合える環境がある。(高津臣吾監督)”
“監督になってから本社との距離感が近いことを知った。本社ではオーナーとお話させてもらったり、優勝したときは社員の多くが祝福してくれたり。(真中満元監督)”
距離が近いということは、本社としては経営方針を現場に向けて共有しやすく、現場からは改善点や要望を本社に訴えかけやすい。こういったトップダウンとボトムアップがスムーズかつフランクに行える環境がヤクルトにはあるようです。
③ファン
“弱小球団だからこそ、負けても寛容になれる。たまの勝利が格別な喜びをもたらせてくれる。(長谷川晶一さん)”
弱小球団だけど一生懸命野球に励む選手たち。そのギャップが守ってあげたくなる母性本能をくすぐらせているのかもしれません。また、組織内部が変化しても、直接介入していないファンはそのことを知らないので、実際はかなり保守的であるとも言えます。
④フロント
“ 野球選手というのは人気商売だ。でも、お金を稼ぐことが人気商売ではない。自分の力を存分に発揮してファンの人に認めてもらう。それが人気商売なんだ。(松園尚己オーナー)”
球団内で格差を作らないために、全員に同じスーツを配布したり、外国の高級車に乗ることを制限したりと、選手には質素倹約を求めています。その代わりに、一度入団すれば引退後はヤクルト本社社員として定年まで生活できる終身雇用制に近い安定が保障されていました。
こういった経営方針はだいぶ昔の話で今はおそらく違うと思いますが、実力主義・自由主義的なプロ野球の世界では珍しいです。あえて安定志向や平等主義に力を入れることで愛着を持たせ、ヤクルトそのものの基盤を強化しようとしたのではないでしょうか。
まとめると、フロントは質素だけど安定した基盤を選手に提供する。監督・コーチがそれをダイレクトに現場につなげる。選手は安心して個々の能力を最大限伸ばすことができる。それが球団に利益として還元されてさらに強い基盤を構築する。このサイクルこそが「ファミリー体質」の正体かと思います。
2.緩さと厳しさのバランス
こうしたファミリー体質が必ずしも上手くいくとは限りません。「負けてもしょうがないよね」という馴れ合いが実際に生じてしまい、結果として成績が芳しくなかったこともあるとか。
“現役のころは本当に明るい、そこまで厳しくない、言い方を変えればちょっと緩い部分もあったと思いますけど。(伊藤智仁さん)”
“確かに、チームカラーはファミリーと言われるだけあって、明るく溶け込みやすいんですけど、間違いなく緩さもありますね。(宮本慎也さん)”
ヤクルトの歴史を紐解くと、実は監督が「管理」するタイプのときに優勝することが多くあるのも特徴のひとつです。代表的な監督として任期9年間で4度優勝した、ノムさんこと野村克也さんがあげられます。
今までのヤクルトは野球を楽しみつつ個々の能力を伸ばす自由主義的な方針でしたが、データを駆使して頭脳を使った成績重視の方針にシフトチェンジしました。いわゆるID野球です。データによって野球を管理し、それを浸透させるためのミーティングも毎日行っていました。
「でも厳しく管理したら反発されるんじゃない?」と思われる方も多いと思います。しかし、管理される組織の場合、そのマイナスがプラスに変化する場合があるのです。
“野村監督が球場に入ってきたら、すぐにピリッとしましたし。相手と戦う前に、まずは野村監督と戦っている感覚もありましたからね。(宮本慎也さん)”
つまりは管理する人が嫌われ者にならないといけない。馴れ合いを生じさせないために、あえてチームの共通の敵になって団結力をうながすことでマイナスをプラスに変えるという何とも言えない荒業。楽しむことと試合に勝つことは水と油なのかもしれません。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。ひとつの組織を自分の理想に近づける場合には、様々なメリットデメリットが表裏一体で存在しています。そのことも踏まえながら組織のマネジメントを楽しんでみてください!
【この記事を書いた人】
IVUSATIMES編集員 神奈川白楽クラブ4年髙橋 諒
去年まで IVUSATIMES 編集長をしていました。編集は慣れてますが、執筆となるととたんに難しくなることを学びました。
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