今回は「マネジメント層は何がしんどいのか」という視点から現状や原因を紐解いていきます。
■IVUSAのマネジメント層
IVUSAの特徴の一つとして、下記のような点があげられます。
●社会貢献活動参加時のみならず、基本的には全員が通年的に支部組織(クラブ)に所属している
●各種社会貢献活動のほか、通年的な学生組織運営も学生が主体となり組織的に運営されている
●その支部組織により、下記のような機能の増進の可能性が生まれる組織形態となっている
①個の強化により社会に対して貢献できることを増やす
事前研修を受講→社会貢献活動に参加・参画→ふりかえりと次のステップの検討→日常組織運営での学びの応用→・・・
というような研修・社会貢献活動現場・日常的な組織運営現場とそれをつなぐスタッフマネジメント体制により個々人のスキルアップとキャリアアップを支援し、個々人の成長により社会貢献活動現場へのパフォーマンスを向上することで、より社会に対して貢献できる状態を目指す。
②組織力強化により社会のニーズに応えられるようにする
“烏合の衆”でなく日頃から組織的動きができるような体制を取っておくことにより、災害発生時などの強い社会的ニーズが発生した時に即応できる体勢を取ることができるようにし、必要な時に動けるようにする。
このような体制を日々試行錯誤しながら維持・運営しているマネジメント層は前回記事の通り特に上層部においては選挙で民主的に選ばれていますが、その下にもたくさんの運営に関わる学生がおり、その数は会員数の43%約1,500人にのぼります(実働状況に関わらない会員区分上の人数)。
“マネジメント”側に回る人たちは、その過程にはいろいろあれど、基本的には自らの意思によりマネジメント側に回ることを選択しており、他の学生生活の中ではあまりない「手を上げれば挑戦ができる」環境の中で、自分なりのマネジメント方法の模索しながら取り組んでいることと思います。
しかし、やはり、ただ参加するといった関わり方よりもしんどいことも多いもの。その“しんどさ”が、それぞれのパフォーマンスを下げたり、学びを阻害したりしている部分も大きいのではないかと推測されます。
広く社会一般でも、“しんどさ”をつくるものとして、「それを感じている個人が持つ要因」と「環境や組織にある要因」との両方が考えられ、こうしたそれぞれの要因に対する研究や試行錯誤がされています。
■会員共通アンケート回答より
まずは、11月1日から20日の20日間で会員ページにログインした2,001人の学生会員の皆さんにいただいた回答の中の「IVUSAで嫌だなと思うもの」について見てみましょう。
5位となっている「非効率で無計画なことを好む」の選択肢は、運営現場での会議や計画策定と実施にあたり「学生組織でしんどさを生んでいるのでは?」という仮定から設置した選択肢でしたが、多数の人たちに選択される結果となりました。
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■“負荷”としんどさ
上記のアンケート結果のうち、今回は特に運営層の39%の会員が選択していた「自身の想定以上の負荷がかかる」ついて掘り下げてみます。
▽負荷はどこからくる??
まず、“負荷”の全てが悪いわけではないこと、その対処については過去の事務局コラムで触れていますので、そちらをご覧下さい。
ある研究では、「高いストレス」の元となったり、その影響リスクが高まる要因となったりするとされている仕事環境に関わる要素として、
①仕事の要求度(※)が高い
②仕事の裁量権が低い
という2点が挙げられています(Karasek & Theoell(1990))が、この点から考察し、“しんどさ”をつくっている敵を探してみましょう。
※仕事の要求度:仕事の量的負荷、仕事上の突発的な出来事、職場の対人的な問題を意味する
▽仕事の要求度が高い?
例えば、こんな悪循環で“仕事の要求度”が上がっている状況がありませんか?
上記だけによらずとも、量的負荷・突発的な出来事・対人的な問題と分けてみてみると、問題の輪郭が見えてきますね。
▽仕事の裁量権が低い?
裁量権とは、「自分の考えや判断で物事を処理」できる程度のこと。では、組織的にはどう定められているかというと、組織運営上、絶対のルールはマネジメント層(スタッフ以上)が会員ページで閲覧可能な「運営指南書」で規定されているもの。ルールとしては各ポジション・会議体の権利(権限)と義務(責任)が規定されています。
そこに書かれている手続きに則り、基本的には合議にて決議がなされ、「すべきこと」や「できること」は決まっていきます。 制度的には異議や意見を上げる場も用意されており、「裁量権は低くないのではないか」とも思われます。(数千人の個々人が個人判断で全員動いたら組織の体をなせない=組織である強みを活かせませんから、権限規定の不自由さはご容赦を…)
しかし、ここで言う「現場にとっての仕事の裁量権の高低」はそうしたルールにより規定されたフォーマルな裁量権によるものだけなのかというと、おそらく違うのではないでしょうか。
「先輩に言われたからやらなければならない(やってはならない)」
「自分たちが決めた方向性的にすべきことだからやらなければならない(やってはならない)」
はたまた「意見を言って変えられると思っていなかった(制度認識)」などなど。
一番生起しやすく、かつ、おそらく多くの人を苦しめていそうなものは一つ目だったりしないでしょうか。 指示としてではなくアドバイス(判断材料)として話したような個人的意見も、受け手がどう受け取るかによっては肥大化し、自由度を下げていく。自由度が下がれば(裁量権が低下すれば)しんどさは増す。。。
発する個々人、そしてそれを受ける個々人の双方が気を付けないと、ルールによらないがんじがらめは無秩序かつ無制限に広がっていってしまうインフォーマルなシステムの存在が想像できます。会員共通アンケートで嫌なこと第5位にランクインしてしまっていた「非効率で無計画なことを好む」も、こうした構造の影響が大きいのかもしれません。
■“しんどい”環境を変えるには
マネジメント層に話を聞かせてもらった中でも、上記のような要因が絡まり、IVUSAのマネジメント層をしんどくさせている部分は大きい様子が伺えました。
では、この環境は変えられないものなのでしょうか? 前述の通り、フォーマルなルールによらない、人と人との関わり、ひとりひとりの考えや発言により起きてしまうことも多いことであるがゆえに、完全に解決することが難しい問題ではありますが、もっとやりやすい環境に変えていくことはできるはずです。
もうすぐ迎える28期。組織構造としても、上記のようなしんどさをつくる負荷を軽減し、より「一人ひとりができることで人や社会に貢献する」ことができることを目指して改革案を具体化しているところです。
本当に環境を変えていくのは制度やルールではなく、その制度やルールを使う人です。よりよい社会貢献活動の展開のためにも、一人ひとりが言動をもちつつ、組織を考えていきましょう。
この記事を書いた人
IVUSA事務局大坪英里奈
IVUSA17期卒で関西事務所勤務。子どもの教育支援事業や新潟県関川村・三重県熊野市での地域活性化活動を担当。プロジェクト・組織マネジメントでの業務分野としては“アド”をこっそり担当しつつ、学生組織運営のサポートもしている。
(写真:プロジェクト帰りに学生たちがプレゼントしてくれたバースデーケーキとともに)
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