2019年度からの新たな取り組みとして始まった、Social Salonとコラボして、社会課題について身近に知り、感じ、考えるイベント、”Social Salon in IVUSA”。
通算第8回となる12月のテーマは、“気候変動”ってなんだ!?
ゲストスピーカーとして、
IVUSAのOGでもあり、国際協力を推進する公益財団法人にて途上国を中心に、気候変動の社会科学の研究をされている吉岡 渚(よしおか なぎさ)さん、
在学時代にサンゴと海洋酸性化の研究をされており、現在はMSC(海洋管理協議会)で働いてらっしゃる高橋 麻美(たかはし あさみ)さんのお話をお聞きし、“気候変動”とその影響、自分に出来ることなどについて知り、感じ、考えました。
▼Social Salonとは
Social Salon in IVUSA関東vol.008は、12月14日に行われました。13名の学生、9名の社会人が参加しました。 参加者全員の自己紹介・本イベントの説明の後、吉岡さんのお話から始まります。
■そもそも気候変動って何? どうなっちゃうの?
“長い時間で見た気候の変化”であり、日本や世界で「問題」としてよく取り上げられる、“地球温暖化”は、その1つです。地球温暖化のメカニズムは以下のようになっています。
(出典:環境省「COOL CHOICE」webサイトより)
実際に、世界の温度は、どうなっているのでしょう?
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告によると、世界の平均気温は産業革命以降約1℃上がっており、早ければ2030年には1.5℃に達するそう!
では、実際に気温の変化によってどんな問題が起きるのでしょうか。
■日本は世界のなかで最も気候変動の影響を受けた国!?
世界でも災害の甚大な被害が起きている一方、日本でも、
・暑熱による死亡リスク、熱中症
・豪雨の頻発、台風の強大化
・水の供給(激しい豪雨は増える一方で、降水日数は減少)
・農業、水産業、自然生態系など、
様々な影響が出ています。
(出典:環境省「おしえて!地球温暖化」より http://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/oshiete201903.pdf)
また、ドイツのNGO「ジャーマンウォッチ」が発表した「世界気候リスクインデックス2020」によると、日本は「2018年に最も気候変動の影響を受けた国」!というお話も。 気象災害による死者数、経済損失などを加味したランク付の中で、1位になったのです。
一方、長野県では、2019年に「気候非常事態宣言」を出し、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質的にゼロにすることを宣言するなど、解決に向けた取り組みも行われています。
■気候変動に対する世界の取り組みはどうなっているの?
世界で初めて国際社会が対策を打つことを約束した1992年の気候変動枠組条約の下で、世界では、気候変動への取り組みが行われてきましたが、その中で、2015年に締結されたパリ協定*にて初めて、“全ての締結国”が、世界の平均気温上昇を(産業革命以前に比べて)2℃未満にも抑えることを目的とし、温室効果ガスの削減を約束することとなりました。
*パリ協定=2015年にパリで開かれた、温室効果ガス削減に関する国際的取り決めを話し合う「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意された2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み
また、IPCCでは、「2050年には世界の温室効果ガスの排出量を、2010年に比べて40% から70%削減する必要がある」、と報告されていることから、再生可能エネルギーの利用などを通じた温室効果ガス削減を(=「脱炭素化」)進めていくことが、求められています。
そして、スウェーデンの高校生・環境活動家であるグレタ・トゥーンベリさんが始めた、気候変動防止のためのストライキやデモが、世界の様々な国の若者へどんどん広がっていると言う動きもあります。背景として、気候変動は原因をつくっている世代・国ではなく、将来世代や途上国が気候変動による悪影響を被ることになるだろうと予測されているためです。
だからこそ、政治や経済をつかさどってる大人世代に早く対策を取るよう訴えているそうです。
■いま、わたしたちにできること
気候変動の対策として、よくいわれているアプローチがあります。それは「緩和」と「適応」です。
わたしたち、一人ひとりが身近なアクションを起こし、二酸化炭素の削減や資源を有効に活用することで、温室効果ガスの排出を抑制するのが「緩和」。一方で、緩和の努力しても長期的には気候変動の影響による災害の規模拡大を避けることは難しいといわれています。そこで特に水災害などへの「適応」も不可欠です。
脱炭素化をする世界に対し、化石燃料への依存が高まっている日本ですが、私たちには、何が出来るのでしょうか?
お話の最後に、吉岡さんより、これからも考え続けるためのヒントをいただきました。
■気候変動とサンゴの関係性
続いては、2人目のゲスト、高橋さんのお話です。
大学・大学院時代は、海に潜って採集したサンゴの研究をされていた高橋さん。 気候変動の1つである、“海洋酸性化”及び、サンゴを中心に、海洋生物が受ける影響について伺いました。
サンゴは、肉と骨の部分に分かれていて、骨の部分が、炭酸カルシウム(CaCO3)という成分で出来ています。しかし、海洋酸性化によって、そのCaCO3が作りにくくなってしまい、サンゴが海にすみづらい環境になり、深刻な死滅の危機にあるというのです。
では、“海洋酸性化”はなぜ起きるのでしょうか。
地上での二酸化炭素(CO2)が増えると、海中のCO2の濃度も増します。CO2の濃度が高くなると、海水の濃度が酸性に傾き、そのことを「海洋酸性化」といいます。
海洋酸性化は、気候変動の中でも水温上昇と共に、海の環境にとっての脅威だといわれているそうです。海洋酸性化によって“骨”の部分が作りにくくなり、海の中での生息が難しくなってしまうサンゴ。
サンゴの種類によって反応も様々ですが、海洋酸性化以外にも、水温上昇など他の要因も起きているので、複合的な条件も加味した上での検討が必要だという意見もあるそうです。
では、サンゴが減ることは、私たちの生活にどんな影響があるのでしょうか?
魚などの海産物が食べられなくなる、観光資源がなくなる…などなど、経済的な影響も高く、私たちの生活との関わりもあります。
最後に、高橋さんからのメッセージとして、“環境問題を考えることで、大切なこと”について、お話いただきました。
例えば、3番目の、「自分の行動のインパクトや位置を考える」については、自分たちの生活を見直すことは大切だけれど、個人の家庭での二酸化炭素排出量は、全体の5%であることから、本当に二酸化炭素の排出量を減らすためには何が必要なのか?冷静に考えてゆく必要があること、などをお伝え頂き、考えるヒントとなりました。
(画像13:虫の目と鳥の目)
ラストは、恒例の“対話TIME”。お2人のお話を元に、さまざまな問いについて、グループに分かれ、自分の意見を言い合いながら、考え、語ります。
<問い①>
気候変動問題、どの位心配していますか?
1ヶ月どのくらいなら、お金を出せますか?
<問い②>
今日のお話や、これまでの対話を踏まえ、
“あなたは”、どんな社会になったら良いと思いますか?
そのために、自分に何が出来るでしょう?
この記事を読んでいるみなさんも、是非考えてみてください。
「知らない」ことと「知る」ことの間には、壁がある。
でも、「知る」ことと「行動する」ことの間にも、壁がある。
改めて、自戒も込もった気づきがありました。
自分たちの生活の便利さとも関係の深いテーマですが、自分たちがすぐにでも出来ることと、視野を広げてみないといけないことの両方を意識して考え続け、動き続けるきっかけとなる場になったように思います。
知ることから、語ることから始めて、よりよい未来のための行動へ。
Social Salon in IVUSAは、これからもそんなきっかけとなる場を目指してゆきたいと思っています。是非気軽にご参加下さい^^!
【関連情報】
▼2015年の、パリ協定締結時の事務局長クリスティアナ・フィゲレスさんのスピーチ
▼お話の中でご紹介いただいた動画、「2100年 未来の天気予報」
◆次回予告
1月26日(日)13:00〜 関西で行います!
テーマは、”障害ってなんだ!?”。
https://www.facebook.com/events/3420313501376095/
※本イベントは、IVUSA会員だけでなく、外部の方の参加も受け付けています。
※学生と社会人が、IVUSAの理念でもある、”共に生きる社会”に向けて対話を行う機会でもある、Social Salon in IVUSA。 これからも月に一度開催して行きますので、ご興味をお持ちの方、是非ご参加ご検討ください。
この記事を書いた人
湯田 舞
IVUSA非常勤スタッフ
IVUSAでは、フィリピンツアー通訳兼コーディネーター/減災プログラム化/社会課題を自分ゴトとして考える場”Social Salon in IVUSA”をやっています。IVUSAのOGではなく、大学時代は少林寺拳法ばっかりやってました。宜しくお願いします
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