Social Salon in IVUSA 関東Vol.006 <テーマ:出所者の支援と社会の現状>



2019年度からの新たな取り組みとして始まった、Social Salonとコラボして、社会課題について身近に知り、感じ、考えるイベント、”Social Salon in IVUSA”。


第5回となる10月のテーマは、“出所者の支援と社会の現状”。 ゲストスピーカーとして、株式会社生き直し代表として、出所者の支援に関わられている千葉龍一(ちば りゅういち)さんと、出所者の当事者であり、出所者支援、若者支援など様々なご活動をされている、竹田淳子(たけだ じゅんこ)さんのお話をお聞きし、刑務所からの“出所者”の支援や、社会の現状・課題について知り、感じ、考えました。


 ▼Social Salonとは  


Social Salon in IVUSA関東vol.006は、10月19日に行われました。10名の学生、5名の社会人が参加しました。 参加者全員の自己紹介と本イベントの説明の後、まずは千葉さんのお話がはじまりました。


“もしあなたの父親が自分と同じ年の女性に性的犯罪を犯し捕まったら、 あなたはどう思いますか?”

 “もしあなたの母親が何度も盗みをして捕まってしまったら、 あなたはどう思いますか?”  


これが、お話の冒頭に、千葉さんから投げかけられた問いでした。 この問いを胸に置きつつ、お話は進んでゆきました。 現在千葉さんは、株式会社生き直しの代表として、刑務所から出てきた方、いわゆる「出所者」の自立支援を行われています。そこに至るまでの千葉さんのライフストーリーをお聞きしてから、出所者を取り巻く社会の現状について、お話を伺いました。  


▼千葉さんがご自身・活動についてプレゼンされている動画です。 

ご興味ある方、ぜひご覧ください!

*現在は駆け込み寺は退職されています。 


 まずは、“刑務所に入るまで”の流れについて。 


逮捕されたらすぐに刑務所へ…という訳ではなく、長い時間とプロセスを経て、刑務所にいくかどうかが決定されます。「起訴猶予」と言って、様々な理由(被害者の犯情や本人の反省事情等)から、あえて起訴(裁判所の審判を求めること)をしない方がその人の更生に役立つと、検察官が判断した場合に不起訴になる場合や、「執行猶予」といって、起訴されて裁判にかけられ有罪となった後、一定の要件のもとに様々な情状を鑑みてその刑の執行を猶予し、その猶予期間を経過すれば刑の言い渡しの効力を失わせる制度など、刑務所に入らないケースも存在します。 


そして、一同が驚いたデータは、“再犯率”。 


平成30年犯罪白書によると、なんと、刑法犯の検挙人数のうち、約半数が再犯者だそうです。 



また、こちらは、刑務所を出所する方の2つのパターンについて。 


刑期満了前に出所する仮釈放となるには上記のような実施的な条件が必要ではありますが、様々な支援があるといっていいと思います。他方、満期出所者にはそのような支援がなく放り出されてしまうので、満期出所者の方が、再犯率が高いというデータが出ているそうです。 再犯率にも大きく関わる、「出所者の自立」をサポートするための施設である、「更生保護施設」。 


入るまでの流れは、このようになっています。 


住む場所である“帰住先”、生活するためのお金、お金を稼ぐための仕事…自立のための必要な手段が極めて手に入りづらい状況にあるため、このような施設の存在は重要です。 “更生保護施設”は、地域住民への説明が必要であった為、地域住民の反対が多くなかなか増やすことが難しく、2011年、非公式で設立することが出来る“自立準備ホーム”という制度が新たに作られました。

これらの施設は、国から委託を受け、民間団体が行なっていますが、資金面や、地域住民などからの“社会の目”など、課題も多く、数が十分にあるとは言えない状況です。 


みなさんの家の隣に、このような施設が出来るとなったら、みなさんは、どう感じるでしょうか…? このような現状を踏まえ、株式会社生き直しでは、下記のような支援を行われています。 



帰住地や就労面での支援の他に、携帯電話を持つ方法や、反社会的勢力からの離脱の方法など、社会復帰・自立の支援を行なってらっしゃいます。  


続いては、ゲストスピーカー2人目、竹田淳子さんのお話。 


有印私文書偽造同行使詐欺未遂及び覚醒剤取締法違反により逮捕・刑務所に服役後、出所された、出所者の当事者でもある竹田さんから、受刑者の現実・出所後の社会復帰の厳しさ、そしてそこに到るまでのライフストーリーをお話いただきました。


家庭環境から非行、刑務所に入られるまでの壮絶な出来事や孤独感など、感じられていた想いを聞き、参加者は、みな食い入るような真剣な目でお話を聞き、メモを取り続けている姿が印象的でした。 “犯罪”を生み出す背景には、決して犯罪を犯したその人だけの責任とは言えない状況が存在するのだと、“他人事”とは思えず聴き入った人も多かったのではないでしょうか…。  


ラストは、恒例の“対話TIME”。お2人のお話を元に、さまざまな問いについて、グループに分かれ、自分の意見を言い合いながら、考え、語ります。 


問い① 想像してみてください。 あなたの知り合いに、犯罪歴があると知ったら、どうしますか?感覚は、変わりますか? 

問い② 想像してみてください。 あなたの家族や恋人など、“大切な人”が犯罪者になったら、どうしますか? あなたの身にどんなことが起こりそうでしょう?  

問い③ 今日のお話や、これまでの対話を踏まえ、 “あなたは”、どんな社会になったら良いと思いますか? そのために、自分に何が出来るでしょう?  


この記事を読んでいるみなさんも、是非考えてみてください。 参加者一同、この日のお話を思い出しつつ、他の人の意見に真剣に耳を傾けながら、自分たちの言葉で語る姿が見られました。


 「“犯罪者”と聴くと、怖いイメージを持ってしまうけれど、その人がそこに至る事情や背景を聞くと、全然印象が変わった。“その人を、その人として見ること”が大切なのではないか。」 

「人と人が居心地よく暮らしてゆくために、他人に“あまり干渉しすぎない”ことが大切なのではないか。」

 「身近な大切な人に“ありがとう”を伝えることが、大切なのではないか。“あまり干渉しすぎないこと”と、違うことのように見えて、本質的に同じことのような気がする。」

 「今日聞いたことを話したり、周りの人と話したりすることが、出来ることなのではないか。」etc…  

揺れ動きながら考え続けた、今現在の、それぞれの想いが発表されました。 


最後に、新たな視点をくださった、ゲストお2人の言葉をご紹介したいと思います。

 1つ目は、千葉さんが仰った、 「知識を持つことは、偏見に繋がる危険性があることを、自ら認識しておくことが大切なのではないか。」という視点。 

そして2つ目は、竹田さんが仰った、 「私はあなたの心を無理に開こうとはしないけど、見てるよ。信じてるよ。と言う、“見守る”姿勢で接することの大切さ」。  


法や制度などの仕組みは、すぐには変わることは難しいけれど、私たち1人1人が創り出す文化や、日々の姿勢に関しては、よりよい未来のために出来ることが、まだまだあるかもしれない−そんな、未来への希望が見えた時間になったように思います。 


知ることから、語ることから始めて、よりよい未来のための行動へ。 

Social Salon in IVUSAは、これからもそんなきっかけとなる場を目指してゆきたいと思っています。


 是非気軽にご参加下さい^^! 




 【関連情報のお知らせ】 

① ゲストの竹田さんからの「舞台」のお知らせ

竹田さんの半生をモチーフとした舞台、「女囚175 part2 更生」が、11月19日(火)〜24日(日)まで池袋グリーンシアターBOXinBOXにて行われています。 

※「IVUSA会員」だと伝えると、割引で3,000円で観劇出来るとのこと…!

※ ご興味ある方、今回のSocial Salon in IVUSAに参加出来なかった方、是非行ってみてください! 



 ② ゲスト千葉さんからのおすすめの映画情報

受刑者の構成過程を描くドキュメンタリー映画、「プリズン・サークル」。 映画を見ることで、今回のテーマについて、更に理解が深まるかもしれません。 来春、公開予定。是非、劇場に足を運んでみてください。  


③ 「日本BBS連盟」のWebサイト 

「自分たちにも出来ること」の話の中に出てきた、ボランティアを募集している「BBS」。 学生でも応募できると思うので、ご興味ある方、ぜひ見てみてください^^ 

※BBSとは…Big brothers and Sisters Movement の略称。少年少女たちの兄や姉のような存在として、一緒に楽しむボランティア活動のこと。 


④ この記事の筆者・湯田の友人からシェアしていただいたblogのご紹介



ハワイで住み、働いている私の友人のお友達が、冤罪にて不当逮捕され、45日間拘置所へ入れられていたそうです。 もしも、海外で住み、働いている中で不当逮捕されたら― 

私は想像したことがないシチュエーションで愕然とすると共に、より自分ごととして考えるきっかけになりました。 よければ、読んでみてください。 


◆次回予告 

・11月20日(水)18:30〜 

群馬初上陸予定です!テーマは、”LGBT”。 


・次回の関東は、12月14日(土)13:00〜 

テーマは、 “気候変動ってなんだ!?” 


※本イベントは、IVUSA会員だけでなく、外部の方の参加も受け付けています。

※ 学生と社会人が、IVUSAの理念でもある、”共に生きる社会”に向けて対話を行う機会でもある、Social Salon in IVUSA。 


これからも月に一度開催して行きますので、ご興味をお持ちの方、ぜひご参加ご検討ください。  




この記事を書いた人

湯田 舞

IVUSA非常勤スタッフ 

IVUSAでは、フィリピンツアー通訳兼コーディネーター/減災プログラム化/社会課題を自分ゴトとして考える場”Social Salon in IVUSA”をやっています。IVUSAのOGではなく、大学時代は少林寺拳法ばっかりやってました。宜しくお願いします

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