(ややマニアックな人向け)日本の政府の各部署はボランティアとどう絡もうとしているのか?


中間支援組織というものがあります。

これは、一言で言えば、「NPOを支援するNPO」です。ボランティアに関する日本で一番大きな中間支援組織が「広がれボランティアの輪」連絡会議というものです(IVUSAも構成団体の一つ)。

詳しくは↓



その「広がれボランティアの輪」連絡会議が8月2日、2019年度「ボランティア・市民活動の推進に関する関係省庁との懇談会」を実施しました。 各省庁の担当者の方が施策の概要と、ボランティアやNPOとの協働について発表し、その後意見交換の場が持たれました。 


出席された省庁は以下の通りです。  

・文部科学省 国立教育政策研究所 社会教育実践研究センター 
・公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 総務局 ボランティア推進部 
・警察庁 生活安全局 生活安全企画課 
・環境省 大臣官房 環境経済課 民間活動支援室 
・法務省 保護局 更生保護振興課 地域活動推進係 
・内閣府 政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(子どもの貧困対策担当)付 
・厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課 
・厚生労働省 社会・援護局 地域福祉課 
・内閣府 政策統括官(防災担当)付参事官(普及啓発・連携担当)付 
・外務省 国際協力局 民間援助連携室 
・文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課 障害者学習支援推進室 


それぞれの発表内容のポイントを抜粋してご紹介します。今、社会課題を解決していくためにボランティアに何が期待されているかを知る機会にしていただければ幸いです。 

なお、あくまで配付資料やプレゼン内容を参考にまとめたものですので、文責は伊藤です。  



■文部科学省 国立教育政策研究所 社会教育実践研究センター 

・ボランティア関係の法令・答申、関連の文部科学省事業、各種制度、基礎データ等を掲載  



・「ボランティアの学びと地域課題解決学習の推進に関する調査研究」(平成30年度・令和元年度)、ボランティア団体を対象とした調査結果(速報)から「ボランティア活動の課題」は何か?(複数回答 n=163) 

1位 ボランティアが高齢化している 70.6%

2位 ボランティアが不足している 48.5% 

3位 予算が不足している 25.8%  



■公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 総務局 ボランティア推進部 

・大会ボランティア8万人募集に204,680名が応募。男性36%、女性64%。日本国籍64%、日本以外の国籍36%。97%以上が10日以上の参加を希望 

・現在、オリエンテーションを実施中。45分の説明会と10分の面談。参加動機で多いのは、「スポーツが好き」「ボランティアをずっとやってきた」「自分のキャリアの有利」など。 

・応募したけど参加できないボランティアの人に他の活動を紹介する。 

・20万人以上のこのデータを今後どう活かしていくかも考えている。 



■警察庁 生活安全局 生活安全企画課 

・防犯ボランティア団体の活動状況に関して。団体数は2016年の48,160を、構成員数は2014年の2,776,438人をピークに減少傾向にある。構成員も60代以上が67.8%を締め、高齢化が目立つ。 

・防犯ボランティアの活動内容としては、防犯パトロール、子ども保護・誘導、危険箇所点検、防犯広報、環境浄化…など。 

・企業のCSRや大学のゼミとして防災ボランティアを行うところも出てきている。 



■環境省 大臣官房 環境経済課 民間活動支援室 

・2018年4月に第五次環境基本計画を閣議決定。

 https://www.env.go.jp/press/files/jp/108981.pdf


・持続可能な地域づくりのために中間支援機能を発揮するEPO(環境パートナーシップオフィス)を全国8ブロックに展開


・環境イベントデータベース環境らしんばん


・持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド



■法務省 保護局 更生保護振興課 地域活動推進係

 ・刑事司法の締めくくりが「更生保護」。更生保護過去に犯罪(非行)をした人を地域社会の一員として受け入れ、自立できるよう立ち直りを支援する活動。 

・具体的には、保護司(約47,000人)、更生保護施設(103施設、定員約2,400人)、協力雇用主(約20,000事業者)、更生保護女性会(約158,000人)、BBS会(約4,500人)など。BBS会は、「兄」や「姉」のような身近な存在として、一緒に悩み、学び、楽しむ青年ボランティア団体。 

・犯罪自体は減少傾向にあるが、再犯者率が上昇を続けており、2017年は48.7%となった。  

・社会的に孤立している人ほど再犯に至りやすい。2017年に再犯防止推進法が施行。 

・2019年に更生保護制度は70周年を迎えた。  



■内閣府 政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(子どもの貧困対策担当)付 

・現在の子どもの貧困率は13.9%(2015年 国民生活基礎調査)。2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」ができて以来、政府は対策の充実強化に取り組んできた。

具体的には⇒ https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/pdf/taikou_gaiyou.pdf


・国民や企業からの寄付によって「子供の未来応援基金」が作られ、草の根で子どもたちを支援しているNPOや公益法人などに助成金として分配されてきた。2019年6月30日現在の寄付総額は約10億9400万円



■厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課 

・ボランティア休暇やボランティア活動普及広報事業を実施している。 

・内閣府の「平成26年度特定非営利活動法人及び市民の社会貢献に関する実態調査」によると、ボランティア活動に関心がある人は62.3%いるが、過去3年間にボランティア活動をしたことのある人は26.8%。


・有給のボランティア休暇制度を設けているの企業は6.0%、無給のボランティア休暇制度を設けている企業は3.6%で合計しても9.6%にとどまっている。 

・今年度委託事業として、次のことを行っていく予定。  


〇ボランティア休暇等に係る企業の参考となる導入マニュアルの作成・配布 

〇自分に「どのようなボランティア活動が向いているのか」等の気づきの参考となる「ボランティア指標」の開発

〇ボランティア休暇・ボランティア活動等に積極的な企業・団体、ボランティア活動等に積極的な個人を対象とした表彰



■厚生労働省 社会・援護局 地域福祉課 

・地域共生社会とは? 

制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会  


・背景にあるのが、「8050問題」や介護と育児の「ダブルケア」など、課題が複合化し、高齢者に対する地域包括ケアシステムだけでは適切な解決策を講じることが難しいケースが増えている。 

・そのためには、多様な担い手の参画による地域活動の普及促進が必要。  



■内閣府 政策統括官(防災担当)付参事官(普及啓発・連携担当)付 

・災害対策基本法の改正の推移  「行政がボランティアによる防災活動の環境整備に努める旨明記」(1995年)→「行政がボランティアとの連携に努める旨明記」(2013年)→「中間支援組織を含めた連携体制の構築を図る旨明記」(2018年 防災基本計画改定) 

・「防災における行政・NPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック」を2018年4月に発表。

・内閣府とJVOAD(特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク)がタイアップ宣言。一種の「お墨付き」



■外務省 国際協力局 民間援助連携室 

・開発協力大綱(2015年2月閣議決定) 開発現場の多様な考え方、ニーズをきめ細かに把握し、状況に応じて迅速に対応できる国内外のNGO/市民社会組織(CSO)、民間財団等との連携は、協力効果の向上及び当該国の公正で安定的な発展にとって重要である。このことを踏まえ、開発協力における参加・協働の強化を含め、NGO/CSOとの連携を戦略的に強化する。そのためにも、我が国のNGO/CSOの優れた開発協力事業や能力向上を支援するとともに、外務省・JICAにおいては、社会開発分野の人材育成。体制整備に取り組む。  


・2000年代初頭のようなODA予算はない。その分民間との連携を強化して、開発目標を達成するとともに、日本のプレゼンスを示していくことを目指している。 

・NGOでボランティアとして活動できるか相談したい場合は、NGO相談員という制度がある。これは全国の主要なNGOに委託し、NGO関係者や一般市民からのNGO活動、国際協力等に関する照会に対応し、理解促進とNGOの組織運営能力の向上を図るもの。  



■文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課 障害者学習支援推進室 

・人口の約7%が障害者と言われているが、彼らは高校(特別支援学校)を卒業した後の学びの場が十分ではない。 

・第四次障害者基本計画(2018年3月30日閣議決定)

学校卒業後の障害者が社会で自立して生きるために必要となる力を生涯にわたり維持・開発・伸長するため、効果的な学習や支援の在り方等に関する研究や成果普及等を行い、障害者の各ライフステージにおける学びを支援する。このことを通じ、障害者の地域や社会への参加を促進し、共生社会の実現につなげる。 

 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/kihonkeikaku30.pdf

・ただ現状としては、障害者の学習活動の支援に関わった経験がある公民館等は14.5%。障害者の学習活動の支援に関わる事業を行っている公民館は10.3%。障害者の学習活動の支援に関わる担当者がいるのが5.6%、組織があるのは3.3%と非常に低い。

 (文部科学省「学校卒業後の障害者が学習活動に参加する際の阻害要因・促進要因等に関する調査研究」) 

・地域における障害に関する理解促進が必要。 



この記事を書いた人


事務局長 伊藤 章

IVUSAの中では管理業務一般と、広報や社会理解学習のプログラム作りをする係。最近は、海ゴミ問題のキャンペーン「Youth for the Blue」も担当

0コメント

  • 1000 / 1000