IVUSAでの経験を基に、大学卒業後も社会問題に対してのアクションをする卒業生がいます。
ここではそんな卒業生の対談をお届けします。
■参加者の紹介
■山崎 梓(やまざき あずさ)
21期東洋(現東京白山)クラブ出身。東洋大学社会学部卒業。
20期東洋クラブ長、21期会員局、沖縄県戦没者遺骨収集事業リーダーを担当。その他、主に災害救援、環境保護の活動に参加。 大学卒業後、多様な課題を抱える若者の就労支援を行う認定NPO法人育て上げネットに入職。現在は広報・ファンドレイズのプロジェクトマネージャー。共著に『若年無業者白書2014-2015-個々の属性と進路決定における多面的分析』 (写真:左)
■吉岡 渚(よしおか なぎさ)
22期同志社今出川(現京都今出川)クラブ出身。京都大学経済学部卒業。
2014年に宮城県山元町復興支援活動のプロジェクトマネージャーを務める。そのほか第6次インド住宅建設活動、第1次フィリピン台風災害救援活動、などに参加。また、全国の災害救援活動に取り組む。 大学院進学後、2018年に都内の公益財団法人に入職。研究員として海洋環境保全や国際協力に関連する事業に携わる。 (写真:中央)
■勝又 栄政(かつまた てるまさ)
24期東京白山クラブ出身。東洋大学文学部卒業。
IVUSA時代は、カンボジア学校建設活動7次隊、8次隊プロジェクトマネージャーを務め、LGBT勉強会を立ち上げる。 現在は、株式会社LITALICOにて、障がい者の就労移行支援を行う傍ら、LGBTパレードを主催する「NPO法人Tokyo Rainbow Pride」での活動や、個人で大学・企業に向けてのLGBT講演活動などを行う。 (写真:右)
―比較的ソーシャル寄りの仕事に皆さん関わっていますが、今の仕事はどういった理由から選ばれましたか?
山崎 割とIVUSAあっての今ですよ。これは本当で。若者支援に興味を持ったのも大学生が中心の組織にいたからだと思う。自分はIVUSAに成長させてもらったと思っているけど、逆にポテンシャルや能力を発揮できないという可能性もあって…、「それは誰にでも起こりうるのではないか」という問題提起はIVUSAにいて多くの人と出会ったから生まれました。
吉岡 選択肢はNPO以外にもありましたか?
山崎 あーそれはなかった。人材育成はお金になる商売なので、それで生活することも可能性としては考えたけど、自分の中では人とお金を結びつけることをしたくなかった。
あと、IVUSAの「事務局」(*)の方がヤバい顔をして働いていたらその考えはなかったかも(笑)。でも楽しそうにやってるじゃないですか、皆さん。非営利団体に抵抗がなかったのはそういった側面を感覚的に知っていたからだね。
吉岡 確かに事務局の方はそういう印象かも(笑)。梓さんは組織全体の運営に関わっているイメージでしたけど、社会問題への意識も大学に入ってから持ち始めましたか?
山崎 問題意識は大学に入る前からあったけど、どちらかと言うと政治に向いていたかな。渚さんは昔からそういったところ感度高そうだよね。
吉岡 小学生くらいから環境問題に関心がありましたね。特に環境と人の関係性ですね。環境汚染や災害といったものが人の暮らしを脅かすことへの危機意識が強くて、IVUSAにいるときも災害救援や国際協力の活動に参加することが多かったですね。
山崎 やっぱり今の仕事にもそれは影響している?
吉岡 かなり影響していますよ(笑)。IVUSAでは特に「現場が第一」(*)じゃないですか。取り決めとか事前の段取りもすごく大事だけど、最終的には現場の人間の判断を優先する。そこが良いなと思って。
ただ、組織が大きくなればなるほど、それこそ、国という単位になると難しくなる。それは当然かもしれないけど、大げさに言えば私は諦めたくなくて。現場で感じたことや、現地の生の声を国際的な会議の場にも届けたいと感じました。
今は海洋環境に関わる研究員という立ち位置で仕事をしていますが、地に足ついた情報を国際会議や援助団体、国との話し合いのテーブルに持っていく。アプローチは違えども、結局は現場からですね。
勝又 IVUSAにいたことでやりたいことが明確化したってイメージですか?
吉岡 そんな感じ。IVUSAに入らなくても研究職にはなっていたかもしれないけど、漠然としていた社会問題に取り組むイメージのなかで、今の自分が信じられる道だと思う。答えはまだ見つかってないけどね。
山崎 現役のときの印象が完全に「現場の人」(*)だったから、今の仕事は結構意外かもしれない。
吉岡 現役のときの姿を見ていたらそうでしょうね(笑)。でも大学では政策や国際的な問題解決のプロセスを学んだりしていたんです。IVUSAでは完全に現場に吸い寄せられていましたが、両軸あったからこそ、「現場」と「政策」を組み合わせようと考えているかも。今思うと学生のときにもやってみればよかったなー。
山崎 それ大事!現場と政策、双方の視点はいつになっても求められるからね。
吉岡 実感として、政策だけだと本当に必要な支援が見えなくなって、現場の声だけだと大きな社会変化の波は生まれない。私の存在意義はその間の声を議論の場に持っていくことだと思っています。
山崎 なるほど。かっちゃんも社会問題に対しての関心は早い段階からあったほう?
勝又 僕は社会に対しての問題意識というのは正直全く無くて。自分が「トランスジェンダー」(*)ということもあって、世の中に受け入れてもらえないという思いが強かったです。誰か助けてくださいって感じで大学やIVUSAに飛び込みました。だから理解してもらいたい、認められたい感情が大きかったかもしれないです。
吉岡 意外…。IVUSAには2年生から入ったんだよね?
勝又 そうです。同期は班長とかやっていて、楽しそうだなっていうのと同時に大変そうにも見えました。そのとき、これだけ大きい組織だから隅々まで目が届かないこともあるんじゃないかって思ったんです。 上手く言えないけどそれは悲しいことだなって。なら自分は目の前の人を大切にしよう、と。それは自分のなかで社会問題よりも大事なことなんだ、とそのときに認識しました。
吉岡 IVUSAではそれを体現しようとしていた?
勝又 できる限りそうしようとしました。カンボジア8次隊の「プロジェクトマネージャー」(*)をやらせてもらったときにも、ダイバーシティマネジメントという手法を取り入れていました。その隊で目指すべきビジョン、ミッションは何なのか。目指すべき意義目標を示し、浸透させる。数値的な成果ではなくプロセスを重視するなど視点を変えれば手段が変わり、多くの人が活躍できる可能性を意識したのは今につながっていますね。
山崎 今につながっていると言うと?
勝又 今の仕事をする原動力ですね。一人ひとりがこの社会で活躍することが可能なのか、という疑問です。障害を持つ人でも活躍できるような社会であれば、結果的に多くの問題が良いほうへ向くのではないかと思っています。
山崎 率直な疑問なんだけど、「LGBT」(*)の業界に行かなかったのはどういった理由?
勝又 LGBTを知ってもらいたいというよりも、その「人」自身を知ろうという思いがあれば誰もが生きやすい世の中になると思ったのが一番ですね。
もう一つあるとすればコミュニティに入ると、どうしても「内」と「外」の話になってしましいがちです。それは自分の目指す方向とは少しニュアンスが違うかなと思って、仕事としてではなく自分の距離感でLGBTには関わりたいと思っています。
山崎 「内」と「外」は痛い言葉かも。ソーシャルで働いていると、思い入れやこだわりが強い分、社会の変化に追いついていないときがある。社会課題に向き合うという根本的な部分と矛盾するようだけど、組織の維持、拡大も同時に行っているとどうしても陥りがちになるよね。
―組織の話になりましたがIVUSAはクラブという形をとっています。みなさんにとってクラブとはどういった存在でしたか?
吉岡 私が入会したときは今出川と京田辺合わせて15人くらいのクラブで、クラブミーティングも3人とか本当に冗談みたいな人数でやっていました(笑)。 でも、というかだからこそ帰属意識は強かったし、大きなIVUSAのなかでもクラブ員という括りを通じて個人との関係を意識できたなと思います。
勝又 渚さんの言うようにコミュニティとしての存在意義も強いですが、自分のなかではクラブでの事業展開ですね。何よりも自分たちが一番長い時間いる大学周辺の地域は身近であると同時に力を入れやすい環境でもあります。小さなものでもいいですがクラブから活動、運動を日常的に進めていくことは大きな意味があると思っています。
山崎 確かに、春・夏のプロジェクトは心躍るものがある反面、瞬間的でもあるね。私が所属していた東洋クラブ(現東京白山クラブ)は最近10周年を迎えたけど、そういった感覚で動くものはIVUSAでも「組織」という視点特有のものかと思います。先代から受け継ぎ、自分たちが積み重ね、次世代へ引き継ぐ。IVUSAという組織全体で繰り返してきたことをクラブという単位でも体感できることは貴重な経験だと思います。
吉岡 学生時代に組織の継承はなかなか経験できないですからね。
山崎 本当にそう。会社もプロジェクトベースで動いているけど、基本的な部分、特に日本では組織の概念は根強く、チームを円滑に動かす能力は強みになる。だからこそ身近なクラブから組織を感じることは社会人になってみると貴重な経験だったんだと気づいたね。
―ありがとうございます。では最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
山崎 IVUSAは、「インカレ」(*)として多くの出会いがあります。特に最初に参加する活動での班長をよく見てください。先輩だからといってすべてが正しいわけではありませんし、逆にあなたの今後の人生に大きな影響を与える出会いかもしれません。大げさかもしれませんが、そのときの感覚を大切にしてほしいと思います。
勝又 自分の声や、目の前の人の声をしっかりと聞いてほしいです。褒められたから、必要とされたからといった理由で動くことも悪くありませんが、最後に大切なのは自分がどう思うのか。好きとか嫌いとかシンプルなものでもいいです。そのときの感覚を忘れずに、活動でも自分や相手の感情をしっかりと受け止められる存在としてIVUSAにいてほしいなと思います。
吉岡 とにかく外にでろ!!(笑)良くも悪くも小社会です。そのなかで何かを成し遂げた経験は卒業してからも自分の中に確実に残ります。逆にIVUSA 以外の社会も当然あります。実際に現場に足を運び、汗を流し、ほかの団体でも企業でも行ってみて頭を使い、失敗できる今を大切にしてほしいと思います。
*事務局 NPO法人国際ボランティア学生協会の職員。専従スタッフは2019年5月現在11名。
*現場が第一 IVUSA会員として、さまざまな価値観を持つ人たちと交流し、自己理解、他社理解を深めながら自らを成長させるための行動規範の一つ。
*現場の人 IVUSAにおいて肉体的負荷の高い環境のある活動に身を投じる人のこと。過酷な環境であるほど内から沸き起こる何かがあるのだと彼らは語る。
*トランスジェンダー 心の性と身体の性が一致しない、もしくは、違和感を感じる人々。
*プロジェクトマネージャー 活動における最高意思決定者。人、物、お金、時間などの資源とリスク管理する責任を持つ。
*LGBT Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつ。 引用:TOKYO RAINBOW PRIDE
*インカレ インターカレッジの略称。Inter(間)+College(大学)で「大学の垣根を越えた」の意味。 IVUSAでは東西約90大学の学生が会員登録をしている。
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