2023年4月1日に、こども家庭庁が発足しました。
こども家庭庁ウェブサイト https://www.cfa.go.jp/
2月末には、2022年に国内で生まれた子どもの数が、統計のある1899年以降初めて80万人を割り込むというニュースが出たこともあり、岸田首相が年頭に発表した「異次元の少子化対策」を実現する司令塔としての大きな期待を受けてのスタートでした。
こども家庭庁によると、2030年代に入ると、日本の若年人口は現在の倍速で急減し、少子化はもはや歯止めの利かない状況になる。2030年代に入るまでのこれからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスとのこと。
出典:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku_kyouka/pdf/kyouka_siryou2.pdf
そもそも最後の人口ボリュームゾーンだった団塊ジュニア世代が(1971年~74年生まれの第2次ベビーブーム世代)もうアラフィフになろうとしているのに、少子化傾向を今さら反転させること自体ムリゲーではないかと思いますが、まあそれを言ったらおしまいということなんでしょう。
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こども家庭庁が進めようとしている施策は資料によると、以下のようなものです。
出典:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku_kyouka/pdf/kyouka_siryou2.pdf
具体的に言うと、児童手当や医療費補助の拡充、子育て世帯に対する住宅支援の強化、育休の際の給付を増やす、などですね。施策のメニュー自体はほぼ出揃ったといった感じです。
ただ、これらすべての施策を実施するには8兆円もの予算が必要であると言われており、どうやって確保するかが問題になります。と言っても選択肢は以下の3つに絞られます。
1.増税
いちばんシンプルな方法。景気に左右されず「薄く広く」徴取できる消費税かと思いますが、当然、政治的にはいちばん困難です。立憲民主党とかは高所得者の課税強化を主張していますね。
2.社会保険料の値上げ
介護保険料のように「こども保険」という形で入れる案。以前小泉進次郎氏も提案していました。当然現役の子育て世代の手取りが減るので本末転倒という意見も。
すでに人件費に対する社会保険の割合(負担率)が約3割になっていることも広く知られるようになっているので、当然反発も大きいわけです。
3.教育国債
いちばん反発は少なそうです。ただ、「負担を子どもの世代に先送りするんじゃないかと」いうことを、こども家庭庁発足時に子どもたちに釘を刺されたらしいです(小倉將信こども政策担当大臣がとあるシンポジウムで言われていました)。
「子どもを社会全体で育てていこう」という理念に反対する人はほとんどいないでしょうが、具体的なお金の負担になればそこに様々な意見や対立が出てきます。
その中でも、子育ての費用負担に反対するのが「高齢世代」と「独身者」です。
高齢世代にすれば、「自分たちが子育てしていた頃は社会からそんなサポートがなかった」「今の若いもんは甘えているんじゃないか」という思いでしょう。
もちろん経済状況や家族形態、コミュニティのつながりなど社会が昔と大きく変わっています。手取りは下がる一方で、子育てにかかる費用は大きく増大しました。でも、高齢者の子育てに対する意識を変えることは簡単ではないようです。
また子育てが一段落しつつある団塊ジュニア世代から見れば、自分たちにはもう恩恵がほとんどないのに、これから負担だけが増えるのかとゲンナリするでしょう。この記事を書いている人も正直そう思っています。
一方で、多くの人にとっては、今や「子どもはぜいたく品」です。
結婚・出産を諦めざるをえなかった人たちには、結婚して子どもを持てている人たちは、それだけで「勝ち組」のように映り、「なんで他人の子育てをサポートしないといけないのか」と負担増は受け入れ難いかもしれません。
実際、マタハラ防止に対して、「妊娠」というカードを最大限に利用して周囲に配慮を要求する人たちを揶揄する「妊婦様」というネットスラングを目にすることを増えましたし、「産まない女子」と「産んだ女子」が職場で大ゲンカした「資生堂ショック」も記憶に新しいです。
中でも育休中の同僚の仕事を巻き取らざる得ずに疲弊して仕事を辞めた人のはてなブログを最近読んだのですが、泣きそうになりました。
この辺りが、将来自分も介護を必要になるかもしれないと、「じぶんごと」に捉えられる介護保険との大きな違いです。もちろん介護保険導入時も大きなハレーションがありましたが。
来月(6月)の「骨太方針」(政権の重要課題や翌年度予算編成の方向性を示す方針。正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」)で財源確保の方向性が出されます。防衛費の増大もあるので、注目しないといけないですね。
子育てをめぐる社会のこのような分断を乗り越え、「こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革」をするために、こども家庭庁はこの夏から「国民運動」を開始するそうです(棒)。
この記事を書いた人
理事・事務局員 伊藤 章
IVUSAの中では管理業務一般と、広報や社会理解学習のプログラム作りをする係。最近は、海ゴミ問題のキャンペーン「Youth for the Blue」も担当
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