2023年2月7日から12日にかけての約6日間、沖縄県にて遺骨収集活動が実施されました。今回は、特定非営利法人JYMA(日本青年遺骨収集団)の方々と一緒に活動しました。
一年前、ウクライナにおいて未曽有の戦争が勃発し、平和という概念が崩れ始めている現在、改めて平和という意味を問い続ける遺骨収集活動に注目し、プロジェクトマネージャーである上西達也さんにインタビューをしました!
活動全体を通じたスローガンである「紡ぐ」という目標に込められた上西さんの平和への想いや活動への向き合い方などを学び取れる内容になっております。ぜひご覧ください!
Q.まずは遺骨収集活動が行われることになった経緯を教えてください。
遺骨収集活動は元々IVUSAの学生が、「南方の硫黄島という場所で戦死したおじいさんの遺骨を、残された遺族である自分たちの家に連れ戻してあげたい」という思いから始まった活動です。
1995年に国が行っていた硫黄島への遺骨収集活動に派遣される形でIVUSAも遺骨収集に携わるようになり、太平洋、ロシア、南アジア地域で活動が行われ、2011年にはIVUSAが主体となって国の取り組みとは別に、沖縄で遺骨収集活動が行われるようになりました。
現在は沖縄の学生も巻き込み、春休みと夏休みに行う活動になっています。
Q.実際に遺骨収集活動を行った中でやりがいを感じたのはどのような場面でしたか?
自分が最もやりがいを感じられたのは「紡ぐ」という活動全体を通じたビジョンが隊員全体に浸透していたと実感できた瞬間です。
元々、「紡ぐ」という少し抽象的なビジョンであったこともあり、実際に幹部のメンバー同士の間でも認識の差が生じてしまいました。
単に2つのものをただ結び付ければそれが「紡ぐ」という状態になるのではなく、2つの個性を絡み合わせて化学反応を引き起こし、新しいものを生み出すという創造的な側面もあるビジョンがプロジェクトマネージャーの自分が考える「紡ぐ」という目標であるということを、バスの中で幹部や参加メンバーと再確認しました。
活動を終えてからのアンケートでは、そうした自分の伝えたいビジョンが正確に伝わったことで、遺骨収集をすることの意義をより一層深く考え直すことができたという感想を伝えてくれる人が多く、自分にとっても遺骨収集活動に携わる上で大きなやりがいにつながりました。
Q.活動を行っていて、印象に残った場面はありますか?
今回の遺骨収集活動にはJYMA日本青年遺骨収集団の皆様がご協力してくださり、遺骨収集活動に慣れていない自分たちに率先してプログラムを組んで、指示を出してくれる姿が印象的でした。
ただ、IVUSA学生もOBの方々やJYMA日本青年遺骨収集団の皆様の意見に受動的に従うばかりではなく、作業を行う上で邪魔になる木を切って地面が見える状態を作り出す際には、効率的に作業ができるよう、夜のミーティングでJYMA側の現場の管理者と、IVUSA側の現場の管理者を呼んでお互いの作業方針を確認し合ったり、無駄な作業が発生してしまっていないかといった、きめ細かいチェックをしたりと、互いに良い刺激を与えあって作業をしていたことも印象に残りました。
Q.追悼式で戦没者の慰霊のために追悼文を作成するにあたって、平和について改めて考えたと思いますが、それはどのようなものでしょうか?
一言で言えば、今起こっている問題に対して自分たち自身が主体的にアクションを起こし続けることだと思います。
現場に行って現地で感じた生の感覚や感情、学びを未来の世代に受け継ぎ、戦没者だけでなく、あらゆる社会課題の被害を受けた方々のことを考え続けることが、平和への第一歩になるのではないかと思います。
もちろん、自分たちの頭だけで考えていれば良いという単純な問題ではないので、社会全体に発信して何らかの行動を促すことが求められるだろうし、ちょうど自分の「紡ぐ」という今回掲げた目標にも通じるところがあるかもしれません。
各々が自分なりの正解を考え続けることが大切だと思います。
Q.今回の体験を通じて学んだことで今後に活かせるものは何かありますか?
戦争で何年もその場所に置き去りにされ、家族に弔いを受けることを待つ、「遺骨」という存在の声にならない声や打ち砕かれた思いをすくい上げるには、言語化して発信する能力を磨くことが重要だと感じました。
今回の活動でも、自分の中でビジョンを現場の幹部に適切に言語化することができず、幹部同士が相互に独自のビジョンに基づいた行動をとってしまい、現場に混乱をきたしてしまうこともありました。
言葉をじっくりと整理してから伝えることは、相手の立場に立って物事を考えるということでもあり、正確に自分の主張を伝えるには困難も伴いますが、適切な意思疎通をすることで悲惨な争いを抑える効果があり、なおかつ分かってもらえたときの喜びもひとしおです。
僕の思う「紡ぐ」は、相手の個性と自分の個性を認め合うということでもあり、それは「寄り添う」とも近いものがあります。戦争というのは、根源的には相手の声に耳を傾けないことから始まります。
皆さんもどうか色々な人の声に耳を傾ける存在になって、一緒に気持ちを共有し、寄り添い続けてみてください。そうしたら、いつの間にか自分にも、相手にも、良い化学反応が起こっているかもしれません。
【この記事を書いた人】
本部広報部 山形酒田クラブ4年佐藤瑛恭
趣味:在来作物を食べること、歴史の公園を聞くこと、城巡り
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