7月20日(月)、「コロナ禍におけるボランティアの在り方とは?」をテーマに、様々な機関で学生ボランティアをコーディネートする4人でのオンライン座談会が行われました。
前半は、コロナ禍でのそれぞれの状況、後半はコロナ禍での学生ボランティアの新たな形について、ざっくばらんに話し合いました。
▼参加者
同志社大学ボランティア支援室 高橋 あゆみさん
特定非営利活動法人NICE(日本国際ワークキャンプセンター) 太宰 茉里さん
千代田区社会福祉協議会ちよだボランティアセンター 宮本 萬梨さん
特定非営利活動法人国際ボランティア学生協会(IVUSA) 湯田 舞
参加者紹介とそれぞれの状況
同志社大学ボランティア支援室 高橋あゆみさん
大学時代に、偶然友だちに誘われてボランティア参加し、そこから興味を持って、大学のボランティアセンターで学生スタッフとして活動をしていました。その時の「ボランティアの立場でも一人ひとりが声をあげていける!」という原体験から、大学生にも、「ボランティアを1つのきっかけとして、社会と関わることができる」ということを伝えていきたいと、中間支援の仕事に就きました。中間支援のNPO、他大学ボランティアセンターを経て、今に至ります。
・大学のボランティアセンターとは
学生と地域を繋ぐための大学内の組織です。仕事内容は、「ボランティアをやりたい!」という学生へのボランティアを紹介、きっかけづくりとしてボランティアプログラムの提供など。学生スタッフとも協働し、大学内でボランティアを広める活動をしています。
・コロナ禍での状況
大学は、卒業式や入学式などの行事もなく、授業は原則ネット配信となり、学生と会えない日々がずっと続いています。課外活動も原則オンラインのみで、対面でのボランティア活動の再開目処が立たず焦りもあるものの、オンラインミーティングでの学生とのやりとりなどを通し、対面ではなくできるボランティアの形を模索し続けている状態です。
・コロナ禍ならでは、の取り組み
同志社大学今出川キャンパスのある京都市上京区ではまちづくりが盛んなのですが、その中で出たアイデアの一つとして、「上京区の独居老人の方と学生との手紙とノート交換」企画が、盛り上がっています。今、2往復目を終えて、3往復目に入ろうとしているところです。10名程度で規模は小さいものの、コロナ禍で出来ることの新たな可能性が見える活動だと思っています。また、子ども関連の活動先に、工作キットを送るという活動も、現在進めているところです。
特定非営利活動法人NICE(日本国際ワークキャンプセンター) 太宰 茉里さん
国際ボランティアに興味を持ったきっかけは、『世界がもし100人の村だったら』という絵本でした。19歳の時、NICEのワークキャンプでマレーシアへ訪れ、初の海外ボランティアでの体験に衝撃を受け、「地域活動やボランティア活動に踏み込んでみたい」という想いを持つも、大学卒業後は一旦、地元の銀行に就職しました。そこでは、広報CSR室で、社員向けボランティア活動のサポートを行っていました。
退職後、1年間世界で旅やボランティアをするNICEの海外プログラムに参加した後、NICEに就職しました。担当は、「グループワークキャンプ」で、企業の社員や大学生を対象とした国内外のボランティア活動の企画・開催などを行っています。
・NICEとは?
“ワークキャンプ”と呼ばれる、国内外への宿泊型のボランティア活動の主催・企画を行なっている団体です。毎年約1,000名の参加者が、NICEを通じて国内外のボランティアへ参加しています。
・コロナ禍での状況
新しい生活様式の基準を守った状態(定員数を下げるなど含め)で出来る活動はやっていこうという流れですが、国内でのワークキャンプ数は例年の3分の1に減っており、キャンプの参加者の充足率は40%程度で、そもそも実施できるかという不安がある状態です。もちろん受け入れ地域側に、東京から人が来るのは不安…という人が一人でもいたら実施が出来ないので、組織の中でも、現状や今後の方針について、日々話し合っている状況です。
・コロナ禍ならでは、の取り組み
対面でのボランティアは難しい反面、オンラインでの活動が盛んになっています。コロナ禍で地域に人がいけないことで浮き彫りになった地域の社会課題についての話し合いや、地域の様子のオンラインでの配信、実際に地域と共にクラウドファンディングを行うなど、対面でなくてもできるアクションも生まれていて面白さは感じています。
千代田区社会福祉協議会ちよだボランティアセンター 宮本 萬梨さん
別の中間支援組織にて、生活福祉資金の部署に2年間勤務後、千代田区社協への転職し、ボランティアセンターに配属となったので、初めは、「千代田区でのボランティアセンターの役割とは?」「私がボランティアセンター職員として何ができるか?」と不安を抱えながら、スタートしました。
そこからIVUSA含む地域の学生たちと出会い、学生・地域との関わり、ボランティアコーディネートの経験を積みました。コーディネートの経験から、制度だけでは解決できない地域の困りごとを、地域の学生と連携して、課題を解決することがボランティアセンターの役割だと感じ、日々活動をしています。
・社会福祉協議会とは?
・コロナ禍での状況
学生たちと春休みに企画をしていたボランティア活動が新型コロナウィルスの影響で中止になってしまい、その後学生とも会えないまま、今に至っています。大学生と遊んで欲しい子どもや、施設や自宅でお話の相手をして欲しいという高齢者のニーズがある一方、学生が施設や自宅に出向くことに対して、双方の安全が担保できるかが難しいですね。日々悩みながら模索しています。 オンラインの可能性を探りながらも、生活で困っている人たちがオンラインにアクセスできないことも多く、オフラインでの繋がりを求める声もある中で、どうしていくかが課題だと感じています。
・コロナ禍ならでは、の取り組み
ちよだボランティアセンターで、新型コロナウィルスで困っている地域の方を助けるために「助け合い事業助成金」をはじめました。こんな大変な状況だからこそ、地域を助けたいと、IVUSA市ヶ谷クラブが助成金を申し込んでくれました。気仙沼での簡易防護服を作る「防護服支援プロジェクト」を参考に、千代田区内の医療施設、福祉施設などに簡易防護服を届ける活動をしています。
その他、いくつかの団体による、子どもが楽しめる動画配信や、マスクやフェイスシールドを作って福祉・医療施設などに送る活動も行われています。
NPO法人国際ボランティア学生協会 湯田 舞
初めてのボランティアは、大学2年時に『地球の歩き方』のスタディツアーで訪れたカンボジアでした。その経験がきっかけで、大学のボランティアセンター提供科目にて「平和学」を学びました。「社会問題について考えたり、行動したりする人を増やしたい」という想いから社会科教員免許を取得したんですが、まずは自身が社会を知りたいと新卒で商社へ入社しました。
退職後、Up with PeopleというアメリカのNPOの「世界各国の100人の若者と半年間、世界を回りながらボランティアやミュージカルを行う」プログラムに参加していました。帰国後、縁があってIVUSAにて非常勤職員をしています。「社会問題を自分ごととして捉える場づくり」をライフワークとし、高校での非常勤講師など、教育系のお仕事もしています。
・コロナ禍での状況
毎年行なっている、夏の国内のボランティアプロジェクトは全て中止となっており、新規の会員獲得が困難な状況です。収益という面で打撃がある以上に、学生の活動の場が不足することによって、毎年プロジェクトによって継承されていた学生間でのノウハウやスキルの継承の機会がなくなってしまっていることが懸念されています。対面での活動再開の可能性が読めない中で、対面主軸・現場中心で活動をどのように変化させていくのかの模索が続いている状況です。
・コロナ禍ならでは、の取り組み
研修や交流の場をオンラインで開催したり、減災についての情報をオンラインで配信したりする動きが活発化しています。活動としては、児童養護施設向けのオンラインでの学習支援が新たに始まりました。また、毎年行なっている活動報告会も、初のオンライン配信という試みが行われ、新たな発信の可能性は広がっているように思います。
【対談】コロナ禍で考える、ボランティアの新しいカタチ
コロナ禍で生まれた、新しい取り組みや動きは?
太宰:対面での活動が難しくなり、改めて、「ボランティアってなんだっけ?」と考える機会になっています。ワークキャンプを一緒に企画している地域の方を招いたオンラインイベントなどを開催していますが、「それって、ボランティア活動なんだっけ?」と改めて考えたりもしていますね。
高橋:オンラインでないのですが、学生たちが、有志で、飲食店を応援するプロジェクトを始めているのを知りました。発起人の学生の、アルバイト先の飲食店が潰れたのがきっかけらしく。インスタグラムを使いながら、インスタ映えする写真を投稿することで飲食店を応援するという形です。「コロナ禍でも行動を起こす学生もいるんだ!」と気づく機会になりました。 これまで想定されていたボランティア活動とは少し違いますが、「社会に対して自分自身が出来ること」という切り口での、今の状況にあった新しい行動の形だなと感じています。
コロナ禍で特に懸念していることは?
太宰:本来、「自発的な」活動であるボランティアなので、参加者のモチベーションは、とても懸念しています…。4月頃は、「そのうち収まる」という期待がありましたが、後期も活動できるか雲行きが怪しくなる中で、どのように参加者をモチベートゆくのかは悩みどころですね。対面、寝食を共にすることあることが大切なワークキャンプ自体は変えたくないけれど、環境に合わせて変えていかなければならない部分もあると感じています。
オフラインでしか出来ないこと/オンラインでしか出来ないこととは?
高橋:ボランティア支援室としては、「地域を知る」「地域の方と一緒に取り組む」ということを大事にしています。「地域の方と出会う」や「課題を知る」ということはオンラインでできるかもしれないと思いつつ、行ってみたいとわからない空気感や土地感、偶然的に出会う会話とかもあるんじゃないでしょうか。今の状況で、オフラインでしか得られない付加価値がなくなってしまっていることは気になっています。
宮本:このコロナの状況になって、初めてオフラインの良さに気づいた感覚があります。学生が直接地域に出向いて得られるものの良さがこんなにあったんだ!と。例えば、おじいちゃんやおばあちゃんが学生にハンドマッサージしてもらって、涙流しながら喜んでもらって、「やってよかった」という感動が得られるのはオフラインならではの良さだったと感じています。
湯田:活動とは違うんですけど、オンラインメインの生活になって、五感のうち、視覚と聴覚しか使わなくなって、感覚を共有出来ないってこんなに違うのか!と衝撃を受けてますね。先日、学生と話していて、「それなら同じ料理を同じ時間に作って一緒に食べたら、味覚や触覚も共有出来るのでは!?」という話になったんですけど(笑)、五感で感じたことを共有できることの大きさは感じますね。
逆に言うと、五感の共有できる工夫ができると、オンラインにも希望があるのかも、と思います。 あとは、オンラインのみの環境だからこそ、これまでやったことなかったことをやるきっかけになったり、どこにいても研修がオンラインで受けられたりして、機会が均等になったのは良いことですね。
宮本:講座とか、何か一緒に学習することは、オンラインの方が良いと感じています。先日、千代田ボランティアセンターで災害の講座を開催しました。なんと、100人近い方が参加してくれました! 講座など、困っている人の発信などの、知識を得る場を作るのは、オンラインがやりやすいなと感じてます。
太宰:最近、人間はエモーショナルな部分に感動するんだと思っています。AIと人間って、オンラインとオフラインの関係に近いなと思うんですけど、五感を使って価値を共有するというのは、人間でしか出来ないからオフラインの良さで、事務的なAI的な要素はオンラインとなっていくのかなと考えています。人間ならではの良さをどう残していけるんでしょう。
今後に向けてやっていきたいことは?
高橋:冒頭でNICEさんのお話にも出ましたが、オフラインでの活動を再開していくにあたり、ガイドラインを、ボランティア支援室として作っていかないといけないと考えています。
宮本:下半期活動再開に向けて、新型コロナウィルス感染者増加により、少し雲行きが怪しくなってきた中で、まだ構想段階ですが、オンライン化についていけない高齢者の方向けに、企業や学生ボランティアさんが教えてくれる、みたいな“ゆるいオンライン講習会”ができないかと思っています。
湯田:オンライン化によって、イベントに離れた場所からでもゲストが呼べるようになったので、これを機に海外とも積極的に繋がった学びの場を創っていきたいですね。
太宰:自分の身近なところでボランティアする機会をもっと作れたら良いかなと思っています。これまでは、東京から地域に出向くという形がスタンダードでしたが、これからは、例えば職員が地域に住んで、そこで地域の人と繋がりながらボランティアをするなど、ボランティアの「地産地消」のような形が増えていくのは魅力的なのではないかと感じています。
最後に、今後に向けて、意気込みや想いをお願いします!
宮本:コロナ禍だからこそ、地域の、生活における困りごとが浮き彫りになってきた部分もあるので、そこに対して、どう学生ボランティアの強みを活かして行けるかをこれまでと違った形も含め模索してゆくことが求められる正念場だと思っています。どのようにオフラインの再開を行うか模索を続けつつ、学生との繋がりを切らさずにやっていきたいです!
太宰:普段、お話する機会がない方々とお話できたので、今後に繋がるアイデアやヒントが見つかりました!最近、オンライン化が進んで、雑談があまりなくなったなぁと感じていて、無駄かもしれないけれど、あったらあったでチャンスが広がるものの存在があったんですね。オフラインだからこそ得られた大事なものは残しつつ、オンラインで繋がれるところは繋がっていって、機会・チャンスを作っていきたいと思います!
高橋:先日、関西のボランティアセンター関係者で集まった際に、「今、繋がりが見えにくい中で、それでもつなぐということはこれまでと変わらずボランティアコーディネーターの仕事」だという話が出ました。どう繋がりを作っていくのか?この状況を、前向きに捉えてやっていくしかないなと思っています。個人的には、コロナ禍で政府が出す方針に私たちの生活が大きく影響されることもあり、最近、学生の社会に対する関心が増えている気がしています。
ボランティア支援室では、「市民性を育む」ことを大事にしているので、社会に声を上げることの意味や機会が増えるのは大切なことだと思っています。オフライン、オンラインそれぞれのバランスを大事に、よさを生かしながら、コロナとお付き合いしてゆくことが必要になりますね。
湯田:コロナ禍で、人と会えない分、自分自身や生活に向き合う時間は、これまでより増えた感覚があります。社会の問題解決や、社会をより良くすると言う文脈で、自分ができること、生活者としてできることを、見つめ直す良い機会として捉えたいと思っています。ボランティア活動も、コロナがなければ、「活動があるから行く」という形から、「自分は何がしたいか?できるか?」を考える時間ができているのではないかと思うので、学生たちのその想いに寄り添っていきたいです。
ボランティアコーディネーターという共通のお仕事をしている中でも、なかなか普段は接することのない他組織の方々とのお話を通じ、様々なアイデアや、withコロナでのボランティア活動の新たなカタチに向けたヒントが見える、あたたかい会となりました。情報や知恵、アイデアの共有が生まれることも、コロナ禍だからこそかもしれません。 ご参加いただいた皆様、本当に有難うございました!
この記事を書いた人
湯田 舞
IVUSA非常勤スタッフ
IVUSAでは、フィリピンツアー通訳兼コーディネーター/減災プログラム化/社会課題を自分ゴトとして考える場”Social Salon in IVUSA”をやっています。IVUSAのOGではなく、大学時代は少林寺拳法ばっかりやってました。宜しくお願いします
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