滋賀県の中央に位置する日本最大の湖、琵琶湖では、侵略的外来水生植物オオバナミズキンバイの異常繁茂が深刻な問題となっています。
このオオバナミズキンバイという植物は南米原産の外来水生植物で、滋賀県では2009年に守山市赤野井(琵琶湖南湖東岸)で初めて定着が確認されました。発見当初の生育面積は142㎡でしたが、急速に分布範囲・生育面積を拡大していきました。
琵琶湖に繁殖しているオオバナ(2014年撮影)
2014年頃の琵琶湖南湖でのオオバナの分布図状況
オオバナミズキンバイの生育面積の推移①
出典:滋賀県(琵琶湖外来水生植物対策協議会)https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5125790.pdf
■オオバナミズキンバイの特徴
・高い繁殖能力(6年で約2,000倍という凄まじいスピードで成長)
・高い再生能力(種子だけでなく、小さな茎や葉の断片からでも発根・再生)
・水陸両生(水中や水際だけでなく陸地でも生育)
■オオバナミズキンバイによる被害
・生態系への悪影響(在来植物や魚類の生息環境の悪化、水質の悪化)
・漁業への悪影響(船行障害、漁場への侵入、魚の散乱場所が失われる)
・農耕地への侵入
このような状況から、2014年6月にオオバナミズキンバイは特定外来生物に指定されました。また、滋賀県では同年に琵琶湖外来水生植物対策協議会を設立し、「機械による大規模な除去活動」や「拡散防止、再繁殖防止のための巡回・監視活動」などの対策を積極的に進めてきました(IVUSAも対策協議会の構成員として参加しています)。その結果、琵琶湖南湖での生育面積は減少傾向に転じました。
オオバナミズキンバイの生育面積の推移②
出典:滋賀県(琵琶湖外来水生植物対策協議会)https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5125790.pdf
琵琶湖南部での生育面積が減少した一方で繁殖地点数は増加し、琵琶湖の北部や下流の京都・大阪にも広がり、繁殖が確認されています。
■生育面積が減少傾向にある中、大規模な除去活動が求められる理由
琵琶湖南部での生育面積が減少する中、2019年に高島市(琵琶湖北部)のヨシ造成地で中規模群落が確認されたため、同年9月に大規模な除去活動を行いました。これは高島市及び琵琶湖北部沿岸市において初期段階での除去が遅れた場合、琵琶湖全域に繁殖範囲を広げ南湖以上に被害が拡大することが懸念されており、群落の早期除去はその対策として有効な手段だからです。今後も大きな群落が見つかった場合は、早期除去を行なっていく必要があります。
北湖から琵琶湖全域に拡散するリスク
■京都・大阪でオオバナが発見されている場所
京都・大阪でのオオバナの分布場所
鴨川(京都市)での活動の様子
鴨川(京都市)での除去活動前後の様子
菅池(堺市)で観察したオオバナ①
菅池(堺市)で観察したオオバナ②
琵琶湖の水は、瀬田川→宇治川→淀川を通って大阪湾に流れ出ます。そのため、琵琶湖で繁殖したオオバナが同じ水系を流れて繁殖範囲を拡大することは理解できますが、それとは異なる水域外でもオオバナが発見されるのは何故でしょうか??
滋賀県立大学の研究によると、「水鳥がオオバナの種子を運んでいる」という説が有力で、鳥の糞に紛れている種子から発芽されることが確認されました。
もし、水鳥によって種子が水域外に運ばれ繁殖範囲を広げているのであれば、今後オオバナミズキンバイがどこで発見されてもおかしくない状況だと言えます。そのため、各地の河川やため池で繁殖していないかどうかの確認をするとともに、生育が確認された場合は早期除去を行っていく必要があります。
繁殖していないかどうかを確認するための「監視の目」を増やすためには、滋賀県民だけでなく、京都・大阪の人たちにもオオバナミズキンバイの基本的な知識や理解、どれだけ危険な存在なのかを認知してもらう必要があります。 また、実はオオバナミズキンバイは近畿圏だけでなく、千葉県の手賀沼でも大繁殖しています。そのため、認知度を高めると取り組みは日本全国で進めていかなければなりません。
■私の生活とのかかわり
「これって直接私たちには関係ないんじゃないの??」と思う人もいるでしょう。 実際は、「生態系への悪影響」「異臭」「景観の悪化」「在来魚が淘汰されて食べられなくなる」「川幅の狭い河川でオオバナミズキンバイが大繁殖した場合、台風や大雨の時に川の流れが阻害され、氾濫リスクが高まる」など、他の様々な問題に発展していき、私たちの安全な生活にも影響を及ぼす可能性があります。
「景観の悪化」の比較
昔の烏丸半島(草津市)
2014年頃の烏丸半島(草津市)
この問題に対して滋賀県では行政、環境団体、漁師、企業、学生など様々な立場の人たちが、それぞれの強みを活かして役割を担うことでこの問題に取り組んでいます。
滋賀県での活動における多様なセクターとの連携
今後オオバナの繁殖範囲がより拡大してしまった場合、滋賀県で行われているような対策に向けた協働体制のモデルを各地で確立して対応していかなければなりません。
このように、オオバナミズキンバイの問題はもはや滋賀県だけの問題ではなく京都、大阪、に住んでいる皆さんにとっても身近な問題となっています。この活動についてもっと詳しく知りたい、プロジェクトの作り手に参加したいという方は是非、事務局金子(kaneko@ivusa.net)まで連絡ください!!
■この記事を書いたひと
金子 泰之 IVUSA22期
学生組織では運営本部、事業本部を担当。
プロジェクトでは飯山市活性化活動、オオバナミズキンバイ除去活動を担当
本業の傍ら、書道の先生としてボールペン字講座や、筆文字でロゴ作成などもしています。
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