天竜川鵞流峡からはじまる竹取り物語

さて、これからするのは「竹」のお話。


みなさんは「竹」と聞いて思い浮かべるものは何ですか? 


かぐや姫ですか? 


それとも、京都嵐山の竹林でしょうか? 


私は桃○の「や○らぎ」です。 

これと吉○屋の牛丼の組み合わせが最強すぎるので、是非お試しあれ。  


今日はそんな竹の基本的なお話と、この春から始まるIVUSAの新しい事業「天竜川鵞流峡復活プロジェクト」の紹介を簡単にさせて下さい。 



■竹とは

日本古来より、笙や尺八といった楽器、籠や扇子などといった竹細工、家屋の土壁の骨組みに竹が使われ、漁業の漁具や筏などとして使われたり、燃料に垣根に正月飾りとして使われたりと、日本人の生活の中に「竹」は欠かせない資源でした。 


そんな「竹」も、近年のプラスティックの普及、ガスや石油といった化石燃料の普及によって、生活の中で使われることは少なくなり、お土産屋で見かける程度です。 

(伊豆修善寺のお土産屋にて) 


そんな生活に欠かせなかった「竹」が日常的に使われなくなったことで、放置され、竹害とまで呼ばれるようになってしまっています。 


「竹」と一言で言っても、「真竹」「孟宗竹」「淡竹」「根曲がり竹」と、たくさん種類があります。それぞれに特徴があり用途なども違うようなので興味がある人は是非各々で調べてほしいですが、一般的な太くて立派な「孟宗竹」は、たけのこのために江戸時代に中国から入ってきたとのことで、かぐや姫はもっと小さい日本に古来からある竹から生まれたみたいですね。



■竹の成長

竹は、とにかく成長が早い。 

(出典:鵞流峡復活プロジェクト https://vivaalpsmusicfes.wixsite.com/home/blank-13) 


常緑性の多年生植物であり、毎年地下茎の節にある芽子から新しい竹を発生させ、わずか数か月で立派な竹に生長するという特徴があり、林野庁の記録によると、なんと1日(24時間)にマダケで121cm、モウソウチクで119cm伸びたという記録があるそう。 


あり得ないですが人で言うと、人間の新生児が48~50センチですから、生まれた翌日に寝て起きたら170センチの大人ってことですね。恐るべき成長です。 



 ■竹の社会課題

生活に欠かせなかった竹が使われなくなり、放置され、竹害と呼ばれるまでになっている、と先に述べましたが、具体的に何が問題なのでしょう。 

① 景観:

 成長が早く密林化し、高く軽いため枯竹など倒れず、整備されていない状態となる。 

② 環境:

密林化した竹林は、治安悪化、不法投棄といった人の暮らしの環境へお影響を及ぼす。 

③ 災害:

上の問題もさることながら、根が横にはることでの地盤の弱体化、土砂崩れや山崩れといった自然災害の原因にもなっていると専門家も警鐘を鳴らしている。(※日本地すべり学会) 


これ以外にも、生態系への影響など様々な問題を指摘されています。 



■そもそも竹林って、どれくらいあるの? 

6年前のデータにはなりますが、林野庁のデータでは161,400ha竹林があり、日本の森林面積の0.6%だそう。ピンときませんね。 

だいたい東京ドームで345,000個分くらいです。 

余計わかりませんね。 

東京都全域の8割くらいの面積です。 


温暖化によって竹の生息域は広がっているといわれ、さらにすべてが正確な数字になって出ているわけではないので、今はもっと広がっているかもしれません。 



■この「竹の山」が「宝の山」に代わるかも!?  

ここで考えたいのは、竹が悪者なのかってこと。 
考え方ひとつ、関わり方ひとつ、使い方ひとつで大きく変わってきます。  


そんな竹の可能性にチャレンジすべく、IVUSAも来春から、長野県飯田市において、「天竜川鵞流峡復活プロジェクト」を行います!! 


天竜川は、長野県諏訪湖から愛知県、静岡県を経て太平洋へ至る一級河川。
その上流部にあたる、長野県飯田市にある鵞流峡。 


ここ鵞流峡のエリアも、放置竹林に悩まされるエリアでした。
そんな中、立ち上がったのがここで観光舟下りをしている船頭さんたち。 

「景観を取り戻したい」「美しい鵞流峡を復活させたい」と、10年ほど前にはじめは数人で始めた整備活動。


しかしながら、一旦整備をしても、竹は親の仇のように生えて来て2,3年後には元通り。 竹の力にどうしたものかと。 

ただ整備をするだけではつまらん

面白くなきゃ続けられん。

竹をなんか使えないか? と、

この10年とにかくいろんなことを試みて、徐々に仲間を増やし成果を上げています。  


たとえば、

竹細工や竹炭といった昔からの利用はもちろんのこと、 

(竹灯籠もクオリティーがすごい) 


竹いかだで川下りをしたり、

竹ボイラーでお湯を温め足湯やシャワーにしたり、 

(竹ボイラー:竹を切らずに刺しとくだけで、数十分いちいち薪をくべる必要なし)  


さらには新たに生えてきた幼竹を伐採し、地元高校生や企業と一緒にメンマに加工し販売をしたりしています。 



 ■天竜川の活動では何をするの?  

「いまさら大学生がボランティアで入らなくても、もう成り立っているのでは?」、

と思う方いるかと思うかもしれません。では、学生が天竜川で何をするのか。

それらの話も含め、IVUSAでは活動を作る最初の段階として、現地視察があります。 

いきなり学生と行くこともあれば、まずは職員のみで行くこともあります。  


今回は2018年9月に飯田市まで、私一人で飯田市まで行ってきました。 コストをかけて行く以上、事前に調べられる話や確認しておけることはあらかじめ済ませ、現地で必要な調査調整を様々行ってくるのですが、主に確認することは2つ。


現地の課題を理解し現地のために何が出来るのかを大前提に、本当にやれるかどうか(物理的可能性)と、

本当にやる意味があるかどうか(必要性と意義)

の判断材料をまとめて確認をします。  


ざっくりと内容を言うと  

①移動や宿泊環境といった前提となる、IVUSAで言う移食住

移動と言っても、人数規模を含めた、現場移動(移動手段の想定からバスの乗降ポイント) や現場を見て当日のスケジュールを想定しシュミレーションします。


さらに宿泊環境も、候補となる場所を数か所選定し、数パターンコスト面や距離、大きさなどから数か所を調査(利用手続きの確認など)優先順位に基づいて施設をチェックします。 初めての場所に行くため、ほとんどの場合公民館や公共の施設などを宿泊で外部に貸すという全例がなくハードルは高いため、そこをどうクリアするかを明確に準備しておくことも重要です。

また、現場環境や作業や移動でのリスク面の確認と、難しいと感じた場合どうやったらできるかのヒントをその場で確認します。 


②課題の現状

と言っても、ただ現場をみて「わー大変」ではありません。大体調査に出向くところは、どこも大変な状況です。(笑) 

どのような課題があり、相手方がどう考えどう取り組んでいるのか、本当に公益性が担保されているのか、その周辺環境や周りの理解など、さらにIVUSAに何を求めているかの本心であったり、時に直接聞きにくい話などは、遠回しに移動の会話などで、日常会話的に聞いたりする。調査は長時間にわたるため机を挟んでだけでなく、現場で、移動中に、食事中の何気ない会話が何より大事になったりします。 


ということで、見てきた鵞流峡。

約3キロにわたる鵞流峡、 そこの両岸に広がる竹林、、、いや、竹崖 

竹林整備とは名ばかりで、崖です。

崖での作業は過酷で、そう生半可なものではありません。
切った竹で、自分たちで足場を作り、整備を進めていきます。

写真のような崖が数キロにわたっていると想像してください。 


10年間で地元の方の努力もあり、天竜川鵞流峡の片岸は大半の整備が進んでいますが、まだまだ反対側はほとんど未整備であり、さらにこれまで整備したところも継続整備をしていかねばすぐ元通りになってしまいます。 


そこでIVUSAの力を貸してほしいと、IVUSA卒業生であり地元飯田市でこの活動に関わっている、小原和也さん(IVUSA22期卒業生)から話があり、今回の現地調査を経て2020年春の活動へとつながりました。


調査を経て、今回実施を決めたこの「鵞流峡復活プロジェクト」は、ただの竹林整備活動ではありません。 この活動を通し、日本に広がる放置竹林の課題を、各地域の大学生が各地で取り組んでいけたら、なにかすごいことが出来るのではないか。 


各地で、ただの竹林整備ボランティアではなく、地元住民や地元企業と協力し、竹林を整備し、そこから出てくる幼竹をメンマにし、伐採した竹を利活用することで、大きな利益ではなくとも物や資金の循環を構築出来たら、持続可能な事業として放置竹林はメンマ畑に代わり、竹害は竹財になり、先に述べた課題を解決できるのではないか、と目論んでいます。  


プロジェクト関係者の方々に聞いて驚いたのが、現在日本に流通しているメンマは99%が中国産だそう。もちろん飯田産の国産メンマ、頂きました。


お世辞抜きに「美味い!!!」 私の好きな穂先メンマを国産で作り、大好きな特盛牛丼にぶっかけて食べたい。些細なきっかけでできた、今の私の小さな夢の一つです。  


この「鵞流峡復活プロジェクト」は、鵞流峡を何とかするとかいう話ではなく、そこで活躍されている方々と共に地域の課題に取り組み、若者のマンパワーでサポートしながらスキル・ノウハウを学び、若者の柔軟性とアイデア、さらにはフットワークの軽さで、活動を広げていく活動です。 


若者だから出来ること。 

若者だから出来ると期待されていること。 

わくわくしませんか。 そうだ、鵞流峡行こう。



■この記事を書いた人

IVUSA理事/法人事業部 部長 高井 洋季 

IVUSA11期、カナダブリティッシュコロンビア大学国際関係学部卒。新規事業開発や事業コーディネートを担当。プロジェクトでは、カンボジア小学校建設事業、カンボジア子ども教育支援事業、国内各地の地域活性化事業等を担当。

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