このウェブマガジンを立ち上げるにあたって、サンプル的な記事をつくろうということで書いてみました。
最近、NPOやNGOの業界(「ソーシャルセクター」とも呼ぶ)でよく使われる言葉に「コレクティブ・インパクト」というものがあります。
この言葉はもともと、2011年、John KaniaとMark Kramaerという人たちがStanford Social Innovation Reviewで発表した論文”Collective Impact”で提唱されたものです。
簡単に言うと、行政にしろ、NPO・NGOにしろ一つの団体や組織だけで社会の課題を解決していくことはできないので、みんなで一丸となって(コレクティブ)、社会を変えていきましょう(インパクト)というものです。
それだけ聞くと、「協働(コラボレーション)と何が違うの?」と思われるかもしれませんが、これもざっくりと言うと、協働がバイ(二者間)のものであることが多いのに対して、コレクティブ・インパクトはマルチ(多者間)を指すことが多いようです。
オリジナルの論文を読みたいという奇特な人は以下を見てください。 https://ssir.org/articles/entry/collective_impact
要は何なの?
論文の中では、コレクティブ・インパクトの特徴(重視するもの)を以下のように定義しています。
- Common Agenda(アジェンダの共有):全員が同じ目標を共有する。
- Shared Measurement Systems(評価システムを共有する):効果の測定を、全員が同一の手法で行い、結果を共有する。
- Mutually Reinforcing Activities(互いの活動の補強): 目標に向けてそれぞれが異なる活動をしつつも、互いに励まし合う。
- Continuous Communication(継続的なコミュニケーション):信頼形成のため、参加者間で定期的にミーティングを行う。
- Backbone Support Organizations(背骨となるサポート組織):専門スキルを持ったスタッフによる、参加団体とは別の機関を設ける。
2018年4月24日、超党派の国会議員からなる「NGO・NPOの戦略的あり方を検討する会」が立ち上がりましたが、その設立総会でもコレクティブ・インパクトがキーワードになっていました。 http://blog.livedoor.jp/suzuki_keisuke/archives/51859684.html
じゃあ、日本でコレクティブ・インパクトの事例はあるのかと言うと、まだ「こうできたらいいよね」というお話レベルのような感じもしますし、バックボーン組織といっても、その運営のためにどこがお金出すの?…等の疑問がないわけではありません。
ただ、社会課題は複雑であり、単体の主体のアプローチ(Isolated impact:孤立したインパクト)では限界があるという前提は社会的なコンセンサスと言えるでしょう。
「事務局」がないと長続きはしない
個人的には日本のコレクティブ・インパクトの一つの事例と言えるのではないか思うのは、2011年に発足した社会的責任に関する円卓会議です。 https://www5.cao.go.jp/npc/sustainability/forum/index.html
これは当時の民主党政権の「新しい公共」政策の一環として進められ、行政、企業、NPO・NGOセクター、金融セクター、労働組合、消費者セクターが一同に会して、社会的課題について議論し、それぞれが行動計画を作っていくものでした。
私も少しかかわっていたのですが、行政主導のいわば「結論ありき」の審議会形式ではない新しいカタチに率直に感動しましたし、普段接しない他セクターの人たちともいろいろ話すこともできて個人的にも楽しかったです(経団連本部というものに初めて行きました)。 しかし、これも中心となっていた内閣府のコミットメントが弱まると、結果として自然消滅のような形になってしまいました。
ただ、その中で多くのアウトプットも出されています。例えば、地域レベルでも円卓会議をしていくためのガイドラインが紹介されています。
http://blog.canpan.info/dede/archive/600
結局のところ、どこか「事務局」として実務を担うのかが一番の課題と言えるでしょう。
この記事を書いた人
事務局長
伊藤 章
IVUSAの中では管理業務一般と、広報や社会理解学習のプログラム作りをする係。最近は、海ゴミ問題のキャンペーン「Youth for the Blue」も担当
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