イマドキの若者のメンタルヘルス事情

 大学生のメンタルヘルス事情や大学生指導で気を付けるべきポイントなどについてIVUSAのOGで精神科医の伊東亜佐子さんにお話をお伺いしました。伊東さんは2026年度からIVUSAの理事も務めていただいています。

(伊東亜佐子さん)


■精神科受診のハードルの低さ

 現在、都心部ではメンタルクリニックが増え、精神科受診のハードルが下がっています。精神科医として、外来をしていると、大学生の診察をすることもよくあります。「バイトが大変」「単位が取れない」といった大学生らしい悩みから、「自分が何をしたいのかわからない」といった、いわば遅れてきた思春期のような悩みまで、受診の理由はさまざまです。

 私たちの学生時代には、先輩、友人、家族に相談していたようなことを、今ではChatGPTのような生成AIに相談したり、医療機関を受診したりする時代になりました。

 冗談で「占いか、スナックか、精神科か」と言うことがあります。役割は全く違いますが、「話を聞いてほしい」「誰かと話して気持ちを整理したい」というニーズは共通していると考えます。


■発達障害(ADHD・ASD)について

 「ADHDかもしれない」「アスペっぽい」といった言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。発達障害という概念は、この10~20年で急速に認知されるようになりました。

 ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意や衝動性、多動性を特徴とする発達特性です。忘れ物が多い、時間管理が苦手、衝動的に行動してしまうなどの困りごとがある一方、興味のあることには高い集中力を発揮することがあります。

 ASD(自閉スペクトラム症)は、人とのコミュニケーションの取り方や、物事の捉え方に特徴があります。曖昧な指示が苦手だったり、予定変更がストレスになったりする一方、特定の分野に強い関心や能力を発揮することがあります。

 大切なのは、「発達障害かどうか」という診断名ではなく、「自分の特性を理解し、どうすれば自分らしく生きやすくなるのか」を考えることです。医療の現場でも、薬だけでなく、自己理解や環境調整を重視しています。


■心の反応と、医療につなぐべき病気

 IVUSAにも多くの学生が所属している以上、持ち込まれる相談もさまざまでしょう。恋人と別れれば悲しくて泣きますし、アルバイトで失敗したり、留年したりすれば、辛くて眠れなくなることもあります。それは「心の反応」として、ごく自然なことです。

 医療の現場でも、そのような場合は、すぐに薬を使うのではなく、環境調整や心理的サポートを行うことが多くあります。IVUSAの人の悩み事も、話を聞き、環境を整え、支え合うことで改善するケースは少なくないと思います。

(大学時代、新潟県関川村大したもん蛇まつり活性化活動に参加したときの1枚)


◾️統合失調症と双極性障害について

 一方で、統合失調症と双極性障害は、「気持ちの問題」や「心の弱さ」ではなく、脳の機能の変化によって起こる病気であり、医療機関につなげることが重要です。

 統合失調症は約100人に1人が罹患する病気で、大学生の年代に発症することも珍しくありません。「誰かに監視されている」「悪口を言われている」といった幻覚や妄想だけではなく、「急に人付き合いを避ける」「授業に来なくなる」「話がまとまらなくなる」といった変化が初期に現れることもあります。

 双極性障害は、異常に活動的になり、睡眠時間が少なくても平気になったり、お金を使いすぎたりする「躁状態」と、気持ちが落ち込み、時には死にたくなるような「うつ状態」状態を繰り返す病気です。本人には病気の自覚がないことも多く、周囲の気づきが重要になります。


■IVUSAのコミュニティとしての価値

 IVUSAで自然に行われている日常の雑談や悩み相談は、多くの学生にとって、医療機関を受診する前の重要な受け皿になっていると思います。支え合いだけでは解決できない問題もあります。しかし、「困っている人の話を聞く」「孤立させない」「必要なときには専門家につなげる」というコミュニティの役割は、精神医療の観点から見ても非常に大きな価値があります。


■大学生の皆さんへ

 私が学生だった頃は、IVUSAの人はみんな個性的だったので、自分が特別変だとは思っていませんでした。社会に出て「IVUSAは本当に個性的で、面白い人たちが集まる団体だったんだな」と感じるようになりました。

 私自身も、エネルギーが多く、多動傾向があることに学生時代から気づいていました。20代の頃は、自分の取扱説明書が分からず、たくさん失敗もし、周囲に迷惑をかけました。特性を理解し、自分に合った仕事や環境を選んだことで精神科医として働けています。

 皆さんも、これから多くの壁にぶつかり、悩むことがあると思います。しかし、自分の特性を理解し、合った環境や仲間を見つけることができれば、それは大きな強みになると思います。「自分はどのような環境で力を発揮できるのか」を知ることはとても大切だと思います。

 困っている人がいたら、ぜひサポートしてあげてください。そして、自分が困ったときには、一人で抱え込まず、周囲に助けを求めてください。精神医療の役割は、「病気を治療すること」だけではありません。その人が、その人らしく社会の中で生きていけるように支援することです。IVUSAというコミュニティもまた、その大切な役割を担っているのだと思います。

(大学時代、新潟県関川村大したもん蛇まつり活性化活動に参加したときの1枚)

0コメント

  • 1000 / 1000