卒業生に聞く「IVUSAの経験はどのように役に立ったのか?」Vol.2 勝田 壱早さん(20期)

「言語を超えたコミュニケーション」息子とのウガンダの旅が教えてくれたこと


大阪クラブを立ち上げ、最終的に100人規模のクラブにまで成長させた20期の勝田壱早さん。卒業後は商社で営業を経験し、現在は高校で社会科の教員をされています。そんな勝田さんは6歳の息子さんを連れてウガンダを訪れたことで、教育に対する考え方が大きく変わったそうです。今回は、世界を舞台に活動してきた勝田さんにその経験と現在の教育活動についてお話を伺いました。


商社から教員へ 世界を知る大切さを伝えたくて

勝田さんの経歴には一言では語りきれません。学生時代から海外への関心が高く、2回生時にはイギリスに半年間留学、その後もバックパッカーとして東南アジアやヨーロッパを巡りました。特にカンボジアでは日本語教師として3か月間滞在し、現地の人々との深い交流を経験されています。

(カンボジアの日本語教師時代の写真)


ーー教員になるという選択をされた背景を教えてください。

勝田さん:何歳になるか分からないけど、最終的には教員として自分の様々な経験を伝えることが出来たら嬉しいなと大学生の頃からぼんやりと考えていて、教職の免許は取っていたんです。社会に出たことがなく教員になるということにすごく違和感があったので、教員の道に進むにしても、絶対に実社会に出て自分でビジネスなど経験してからかな、と。特に社会科の教員というのは、モノの流れだったり、いろんなビジネスだったり、社会のシステムを教えるのに、それらを知らないのに教える側はちょっと違うよなという思いがありました。

そこで最初は、当時最も興味関心のあった、海外と日本をつなぐことができる仕事、商社の道を選びました。食に特化した専門商社で、1年目から中国とベトナムを担当し、現地に買い付けに行く仕事に従事していました。

2〜3か月に1回は現地に行って買い付けをしたり、時にはタケノコを探しにベトナムの山に入っていたり、工場の視察や生産指導をしたりしていました。新商品の開発を日本のメーカーさんと一緒に現地で行ったりと、農産品の買い付け・新商品企画を中心とした仕事でしたね。


ーー商社での経験が教員への転職にどう影響したのでしょうか?

勝田さん:商社では社長を相手にしてモノを売るということが多かったんですが、社長はすでに多くの経験をされて人格も地位もでき上がっているから、今更人を変えることってできないなって思う時があったんです。それなら、これからキャリアを考える世代に何かを伝えた方が、一緒に成長できるんじゃないかなと思いました。

そこで結婚を機に、全国転勤のある商社から地元の高校での教員になったんです。


6歳の息子とウガンダへ 言語の壁を越えた気づき

勝田さんの教育に対する考え方を決定的に変えたのが、6歳の息子を連れて行くために半年弱という時間をかけて1人で作り上げた、ウガンダのスタディツアーでした。この大胆な決断の背景には、子どもの価値観形成において、実体験の重要性を信じる彼女の教育哲学がありました。


ーーお子さんを連れてウガンダに行くという決断は、かなり勇気が必要だったのではないでしょうか?

勝田さん:実は直前まで夫には言っていなかったんです。2週間半ぐらい前まで密かに計画を進めて、予防接種なども秘密裏に済ませていました。隣のコンゴで紛争が始まっていたし、私が行く時期にはエボラも発生していたので、これを言うと100%止められると思って黙っていました。現地では常にドライバーと車を雇い、安全面を最優先にして行動しました。

いろいろな経験をしたのですが、一番衝撃的だったのが、息子に「英語がしゃべれたら、もっと楽しかったよね」と話したときのことです。「しゃべれなくても全然大丈夫」と言われて、「なんで?」と聞くと、「しゃべれなくても通じてるし、思っていることは分かるから、しゃべれる必要ってあるの?」って言われました。


ーーその経験は、その後の教育活動にどのような影響を与えましたか?

勝田さん:語学を学ぶとか、英語を身につけるとかが、グローバルではないんだなっていう考え方が変わりました。もっと本質的なコミュニケーション、心と心でつながることの方が大切なんだと気づかされました。

帰国後の息子の変化も顕著でした。世界地図や国旗の本を買って「ここはどんな国?」と自分から質問するようになり、YouTubeでアフリカの動画を見たがるようになったんです。特にカメレオンに強い関心を示し、図鑑を読み漁るようになりました。

最近では、「貧しさってどういうこと?」って質問してきて、とても困りました。定義付けができないような質問なので、一緒に考えようかという感じで話し合っています。ウガンダの中でも、都市部は貧しいと思わなかったけど、地方は貧しい感じがしたという息子の感想から、「それはなんでかな?」とずっと追求しています。


教育現場で活かす「考える授業」と今後の挑戦

現在、勝田さんが勤務する高校では、従来の一方通行な授業ではなく、双方向の「考える授業」を実践しています。商社時代の経験や世界各地での体験を教材として活用し、生徒たちの主体的な学びを促すことを重視されているそうです。


ーー具体的にはどのような授業をされているのでしょうか?

勝田さん:私の授業は完全にIVUSAのクラブ会みたいな感じです(笑)。前を向いて聞いているだけではなく、ずっとみんなでワークしたり、私が問いを出して「これについてどう思う?」とみんなで考える感じです。例えば、世界の平均年収のデータから人口や産業を分析しようとか、トランプ政権の関税政策で今後どうなるかをみんなで考えたりしています。

私は高校生の頃、あまり授業を聞いていない生徒だったんです。(笑)

教科書を見たら書いてあることをそのまま説明される授業が嫌いで、それなら自分で読めばいいじゃんって思っていました。だから、教科書に書いていないことを教えてくれる先生に興味があったんです。

最近の学校では、定期テストもなくなってきて、レポートや課題での評価が中心になってきました。主体性や思考力、表現力などいろんな判断基準で評価するようになったので、覚える授業ではなく、どれだけ考えるかが問われるようになっています。


ーー今後、どのような教育活動を考えていらっしゃいますか?

勝田さん:本当はスタディツアーを作ってみたいんです。私がウガンダで経験したように、安全面の調査から交通手段、宿泊先まで全部自分たちで調べて組み立てる力をつけさせてあげたいです。

公立高校では、法律や仕組み上なかなか難しいので、自分でやりたいなという気持ちが強くなっています。0から組み立てるのが大好きなので、現地調査から企画まで、すべて自分で手がけたいと思っています。


ーー今の大学生に伝えたいことはありますか?

勝田さん:大学生のうちには絶対に自分で何か行動した方がいいです。0からじゃなくても、自分の興味のあることを与えられるまで待っているんじゃなくて、自分で考えて行動することです。失敗してもいいんです。失敗したらその先どうするか、新たな道が開けているし、でも行動しなかったら何にも変わらない。昔は待っていても与えられたかもしれないけど、今はそうじゃない。大学生だからこそ時間があるからこそ、1年休学してでも絶対にやったほうがいいと思います。



さいごに

勝田さんの経験は、真の国際理解や教育とは何かを考えさせられる貴重な機会でした。言語の壁を越えたコミュニケーションの可能性、実体験の教育的価値、そして主体的な学びの重要性。これらのメッセージは、グローバル化が進む現代社会において、ますます重要になってくると思います。



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