【ソーシャルサロン】海洋ごみ問題に対する世界的な枠組み=条約作りが進行中です

 2023年の夏はメチャメチャ暑かったですね。観測史上最も暑い夏(6月~8月)でした。


 こんなに暑いと気候変動(地球温暖化)という社会課題を、文字通り身をもって体感できるわけで、社会の関心や危機感も高まりますよね。

 環境問題と言えば気候変動といった感じの昨今ですが、忘れてはいけないのが海洋ごみやマイクロプラスチック(あと生物多様性の減少)です。


 私はこの夏、対馬・佐渡・フィリピンのマニラ湾といろんなところで海岸清掃をしてきたので、海洋ごみ問題についてまとめてみたいと思います。

 4年越しにようやくできたマニラ湾清掃。ごみの量がえげつなかったです。


 海洋ごみ問題は昔からあるのですが、社会的な注目度が高まったのは2015年くらいから海の生き物や鳥がプラスチックを飲み込むなどして命を落としているとの報道が増えたことです。ストローが刺さったカメ、胃の中から大量のごみ袋が出てきたクジラなどの写真や動画を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

私が海洋ごみ問題について説明する際によく見せる動画

(国連広報センター「プラスチックの海」)


 そして、この問題がさらに強く認識されたきっかけの一つは、「現状のままでは2050年までに海洋中のプラスチックの重量が魚の重量よりも多くなる」というエレンマッカーサー財団による試算です。2016年のダボス会議で発表され、大きな衝撃を世に与えました。

 

 この問題は、G7やG20などの国際会議でもしばしば議案に取り上げられるようになり、2019年に大阪で開催されたG20サミットでは、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的なプラスチック汚染をゼロに削減するという「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が合意されました。

 企業も脱プラスチックの方針を強く打ち出すようになり、2025年の大阪万博でも一つの大きな柱として認識されています。



 さらに各国でルール整備が進んでおり、日本でも2022年に「プラスチック資源循環促進法」が施行しました。


 ただ、気候変動におけるパリ協定のような世界的な枠組み(ルール)が、この問題に関してはありませんでした。ちなみに気候変動については、1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された「地球サミット」で成立した「気候変動枠組条約」がありますし、条約を批准した締約国会議(COP)が毎年行われるのに対し、海洋ごみ・プラスチック問題は条約がありませんので、枠組みの土台がないわけです。


 

 このような背景から、2022年3月に国連環境総会で、新たに「プラスチック条約」の策定に向けた政府間交渉委員会を2022年に設置し、2024年末までに作業を完了させることが合意されました。

 日本もこの問題には、積極的にかかわっています。札幌市で今年の4月に開催されたG7気候・エネルギー・環境相会合は、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの期限よりも10年前倒しで、40年までにプラ汚染を終了させることで合意しました。


 そして、最終的には2024年の10月~11月に韓国で行われる会合で合意される見込みです。海洋ごみの排出量で言えば、東アジア、東南アジアの国の多くが上位を占めており、国際的な排出規制をしていこうとすれば、これらの国々の反発が予想されます。アジアの国々が受け入れることができる実効性のある条約作りのやめには日韓の連携が非常に重要になっています。


 ちなみに国境の島・対馬では7月15日に「2023日韓市民ビーチクリーンアップ」があり、IVUSAの学生も参加しました。韓国の大学生とのワークショップや交流会もあり、とても楽しい時間となっていました。

 2024年の対馬の活動は、日韓交流に力を入れていく予定です。




この記事を書いた人

理事・事務局員 伊藤 章

IVUSAの中では管理業務一般と、広報や社会理解学習のプログラム作りをする係。最近は、海ゴミ問題のキャンペーン「Youth for the Blue」も担当

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