大学を卒業し、都市部でサラリーマンとして働く人が「ふつう」の今、地方で第一次産業や地域活性化にかかわるという「オルタナティブ」な生き方をしているIVUSAのOB・OGを紹介するこのシリーズ。6人目は岩手県大槌町で新卒から6年半、東日本大震災の復興支援にかかわってきた松岡雄也さん(20期・国士舘大学出身)です。
Q.学生時代はIVUSAでどんなことをされていたんですか?
地方のお祭りのお手伝い、清掃活動に参加してきました。クラブは、今は無き(涙)町田クラブでした。震災後は月一回程度の頻度で被災地に行っていました。
その中でも一番メインでかかわっていたのはこどもの国でも竹林整備で、卒論もこの活動について書いたくらいです。
Q.大槌町に行くきっかけを教えてください。
就職活動を始めたタイミングで東日本大震災が起きて、仕事に対する価値観が変わりました。
これまでは漠然と「東京でお金を稼ぐために働く」ことが当たり前だと思っていたのですが、何か人に直接的に役に立つことがしたくなったのです。普通に就職活動はしていたのですが、実が入らず、卒業前にネットで「いわて復興応援隊」という地域おこし協力隊のスキームを使った復興支援の仕事の募集を見たときに、「これしかない」と思ってすぐに応募しました。面接のときは、横一列に15人くらい面接官が並んでいてビビりました。
結果、大槌町に派遣されることになったわけですが、派遣が決まるまで大槌町には行ったことがありませんでした。山と川と海しかないと思っていたのですが、住んでいたところから徒歩5分でローソンやスーパーもありましたし、Amazonも2日で配達されたのは驚きました。
ただ、大槌町に定住するつもりはなくて、3年くらいでまた転職すればいいかと考えていました。
2022年撮影。高台から中心市街地を写したもの。
中央の建物は文化交流センター。右奥には巨大な防潮堤と水門。
2022年撮影。中央に大槌駅舎と線路。
それより奥は居住不可エリアで空き地となっている。(震災前は住んでいた)。
鹿が出没する。
Q.具体的にはどんな仕事をされてきたんですか?
私が赴任したとき、ちょうど「復興まちづくり大槌株式会社」という第三セクターの会社が設立されるタイミングだったのでそこにかかわりました。最初のスタッフは、自分とキャリアを積んだ年上の女性2名だけで、最初は町の人たちにヒアリングしながら、どんなことをしていくかリサーチをしました。
復興まちづくり大槌株式会社の設立記念式典にて
ニーズとしては工事関係者が泊まる宿泊施設が足りていなかったので(近くの遠野市から1時間くらいかけて通っているケースもありました)、空き地にプレハブを建てて臨時の宿泊施設を作りました。
会社での私の主な役割は経理や人事総務周りだったのですが、人が少ないのでイベントの運営をしたり、観光協会がなかったので東京や盛岡で物販をしたりと、いろいろなことを体験させていただきました。さらにはふるさと納税の返礼品を業者の方と一緒に考えたり、発送のために業者に発注したりすることなんかもしました。ここまでで大体4年です。
そのあと、町役場に移って観光課の仕事を一年やりました。いわて復興応援隊は任期が5年なので、この後は復活した観光協会のスタッフへ。やっていることは相変わらず人事・労務・経理などの組織基盤整備で、黒子的な役割でした。
そして、震災で被害を受けた三陸鉄道が再開されることになり、大槌駅の駅舎を観光協会が指定管理で運営することになりました。駅を鉄道会社以外が管理するというのはあまりイメージできないかもしれませんが、実態は駅というよりはバス停のような感じで、それに付随する施設といった形です。
列車が走ったのを見て、自分の中では「終わった感」が出て、帰ることを考え始めたんです。それで半年くらい引きつぎにかけて退職。今は東京の会社で働いています。
大槌駅の駅舎の様子です。
Q.暮らしはどうでしたか?
実は、私はそんなに人付き合いを重視していなかったです。私が住んでいたのは、新築のアパートで同じように東京から復興支援で来ている人が多く、ご近所づきあいもほとんどありませんでした。あとは、東京から新卒でやってくるということで、気を遣っていただいていて、ほぼストレスはありませんでした。
まあ閉鎖的な町だとは言われていました。20年前に大槌町に来て地元の人と結婚しても、いまだに「よそもの」扱いだと聞いたことがあります。
ただ、私はそんな地域でも客観性は失いたくなかったし、敢えて「よそもの」でいようと、溶け込み過ぎないようにしました。あくまでビジネスライクな関係と割り切っていた感じです。ですから、仕事以外での知り合いはほとんどできませんでした。
あと、私が東京に戻ることを決めたのは、結婚相手のことも大きかったです。彼女は同じ地元(川崎市)の人でしたし、収入の面でも、これからの子どもの教育環境を考えても、大槌町で家庭を持つというのは難しかったですね。
Q.学生やOB・OGにメッセージをお願いします。
新卒で大槌町に行ったことに対して後悔は全くありませんし、貴重な経験を積ませていただきました。一回地方で働くと価値観が変わるというか、都市部で働くということを相対的に見ることができるようになります。それくらい都市部と地方での暮らしや働き方は全然違います。
あと、実際に転職しなくても、転職活動をするといいと思います。それを通して自分のやってきたことやスキルといったことを見直すことができるので。
ただ、新卒でいきなり地域おこし協力隊というのは正直あまりお勧めしません。やはり稼ぎに繋がる一定のスキルを身に付けてから行った方がより地域の役に立てるでしょう。「自分が地域を変えてやる!」といったヒーローのようなマインドや使命感だけでは難しいと思います。しっかりと自分のスキルを磨いていきましょう。
町のシンボル蓬莱島。
ひょっこりひょうたん島のモデルと言われているとか。町民は大好き?
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