「ロストジェネレーション」という言葉を聞いたことがありますか?
通称「ロスジェネ」。直訳すれば「失われた世代」。「迷える世代」とも訳されます。日本では、1990年代初頭のバブル経済崩壊後に訪れた就職氷河期に社会に出た人たちを指します。具体的には、1970年~1982年生まれの人たちです(2022年現在、40歳から52歳くらいです)。
ちなみにその後がミレニアル世代(デジタルネイティブ)、Z世代(ソーシャルネイティブ)と続きます。
ロスジェネは新卒で正規雇用に就けなかった人が多いので、働き盛りにもかかわらず、不本意ながら非正規雇用で働き続けている人も多いのが特徴です。また、就職氷河期が落ち着いて第2新卒として就職できそうな頃にリーマンショックの不況(2008年)が訪れ、就業経験を積めずにいる人も少なくありません。
結婚しない人も増えました。ロスジェネの初期は、団塊ジュニア世代(第二次ベビーブーム)と重なっています。結果、第三次ベビーブームが来ずに、少子化・人口減少が決定的になりました。
出典:https://www.chosyu-journal.jp/shakai/11874
この記事を書いている人も、ロスジェネど真ん中ですが、確かに「社会のワリを食っている」と感じることは多々あります。幼少期の子育て支援が充実し始めたのは、自分の子どもが大きくなってからですし…
さてそれはさておき、この2年間の新型コロナウイルス感染拡大によって、新たなロスジェネが生まれるんじゃないかという懸念があります。
というのもこの2年以上、学生が感染拡大防止のために文字通りFace to Faceの場を作ることができなかった影響が様々なところで出始めているのです。
日本赤十字社が今年の1月に発表した調査によると、
●2020年4月の緊急事態宣言から2021年9月の宣言解除までの期間におきた若者の心の変化では「何もしたくなくなる、無気力(高校生43.0%/大学生49.0%)」「孤独を感じ1人でいるのが不安(高校生28.0%/大学生35.0%)」
●近い将来の進学や就職への不安に関して、高校生は「受験や就職活動で苦労するのでは(42.0%)」、大学生は「進学先や就職先で評価されないのでは(31.0%)」
●若者が抱く将来の社会生活に対する不安では「新しい人間関係を築くのが困難(高校生30.0%/大学生33.0%)」と最も多く、次いで「対人コミュニケーションスキルが身につかない(高校生30.0%/大学生27.0%)」
とメンタルヘルスに悪影響を与えていることが分かります。
ダボス会議を開催している世界経済フォーラムは、2021年1月に「グローバルリスク報告書2021年版」を公表し、今後10年間に発生する可能性の高い、あるいは影響が大きいリスクなどについて指摘しています。
その一つとして「パンデミアル(Pandemials:パンデミックを生きる15〜24歳世代)」が取り上げられました(Pandemials: Youth in an Age of Lost Opportunity)。
IVUSAでも対面での活動機会がコロナ前から激減し、「現場」で継承されてきた運営の知識やノウハウが断絶するかもしれない危機にあります。これはIVUSAだけでなく、社会活動をしている団体に共通しています。
もちろんオンラインでの活動の新しいカタチや可能性も出てきていますが、総合的に見ると多くのIVUSA会員の人たちのモチベーションの源であった人間関係のつながりが弱くなってしまったのは間違いありません。
IVUSAの30期のスローガンは、「打ち破れ〜ひとりじゃない〜」であり、中心的には「希薄化した人間関係の再構築」を掲げています。
コロナ禍3年目、このまま「ロスト」してしまうのか、ここから「リカバリー」していけるのか、IVUSAも社会も大きな岐路に立っていると言えるでしょう。
ただ、ここで考えなければいけないのは、若者と高齢者に「等しく」行動制限を強いるのは妥当だったのかということです。
東京都立大学の谷口功一教授(専門は法哲学)は、今年の1月29日に放送された「朝まで生テレビ」の中で、「高齢者を救うために若い女性を殺している」と強い言葉で問題提起しました。谷口氏は以下の記事でその真意を詳しく述べておられます。
要は、「命を救うため」という大義名分のもと、重症化リスクの低い若者にも一律に制限を課すことは果たして「正義」なのかということです。
文字通り「未知なウイルス」であったコロナ禍初期ならいざしらず、ある程度の知見も得られた現在、どこまで活動を制限すべきなのかはもう一度しっかりと議論していく必要があるでしょう。
思えば、ロスジェネを生み出したバブル経済崩壊の時も、リーマンショックの時も、中高年正社員の雇用を守るために新規採用を抑制し、結果として若者世代にしわ寄せがきました。高齢者を何より優先するのは、この30年余りの日本の宿痾(持病)のようなものです。
7月には参院選があります。
自分たち学生が、「機会の喪失」(2月28日代表ブログ)をリカバリーすることを妨げないのはどこかという視点も持っていただけたらどうでしょう。
この記事を書いた人
理事・事務局員 伊藤 章
IVUSAの中では管理業務一般と、広報や社会理解学習のプログラム作りをする係。最近は、海ゴミ問題のキャンペーン「Youth for the Blue」も担当
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