ミャンマーで今、何が起きているのか?

今年の2月、ミャンマーで軍によるクーデターが起きました。

現在も市民の抵抗デモが弾圧されており、国際社会から多くの非難を受けています。

 

ミャンマーの現状について、インターバンドという国際協力NGOが行ったオンラインワークショップに参加して学んだ内容をまとめてみました。ワークショップの様子はYoutubeからご覧になれます。


また、IVUSAのOBの田中英和さん(28期・東京多摩クラブ)にインタビューしました。田中さんはミャンマーにルーツを持ち、この問題についてもSNSで積極的に発信しています。



■ミャンマーの歴史(第2次大戦後のみ)

もともとイギリスの植民地で、第二次大戦時は日本が占領

1948年 ビルマ連邦共和国として独立

1962年 クーデター、社会主義体制(ネ・ウィン政権)

1988年 民主化運動、国軍がクーデターを起こし軍事政権開始

    国民民主連盟(NLD)結党

2010年 総選挙、軍事政権解散

2015年 ミャンマー政府、カレン民族同盟(KNU)ら8つの武装勢力と停戦合意

    総選挙、NLDが両院で過半数を獲得

    アウンサンスーチー氏が国家最高顧問就任(外国の配偶者がいる人は大統領になれない)

2017年 ラカイン州でアラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)による襲撃事件と、国軍による報復攻撃(一般市民に対しても)→ロヒンギャ難民問題

2019年 ロヒンギャ問題が国際司法裁判所(ICJ)で審理

    スーチー氏「国軍は暴力的行為をしたが、ジェノサイドにはあたらない」

    →国際社会から批判「ノーベル平和賞を返上しろ」という声も

2021年2月1日 軍事クーデター(ウィンミン大統領、アウンサンスーチー国家顧問、NLD幹部などが拘束される)

2021年2月5日 CRPH(Committee Representing Pyidaugsu Hluttaw 連邦議会代表委員会)発足(NLDの議員が結成)

市民による「不服従運動(CDM)」(街頭デモを行う)と国軍による武力弾圧(700人以上が殺害される)

国軍がSNSを規制

3月~4月 カレン民族同盟(KNU)、カチン独立軍(KIA)との戦闘再発、国軍による空爆、タイへの避難民の発生→事実上の「内戦」の様相

3月31日 CRPHが国軍の政治参加を保証する現行憲法の廃止を宣言

4月16日 CRPHが国民統一政府(NUG)樹立宣言(国軍は最高意思決定機関の「国家統治評議会」を設置しており、二つの「政府」が並立する事態)

     NUGの一翼を担う少数民族の武装勢力による軍事訓練を受ける民主派の青年たちも出てくる

国連安保理も議論しているが、中国と欧米の間で溝があり、効果的な対応はできていない(議長声明のみ)

4月24日 ASEAN特別首脳会議

5月5日 NUGが国軍の攻撃から支持者を守る目的の「国民防衛隊」を設立



■この問題を見るポイント

 全国で100万人以上の市民が、国軍のクーデターに対し徹底した非暴力・不服従でデモを展開(CDM)、民主主義を取り戻すために、これまでの民族の対立を超えて連帯

 デモ隊を狙った実弾射撃、家庭に踏み込んでの無差別テロ行為、拘束者への拷問・性暴力、デモ参加者に対し医師資格のはく奪や公務員免職措置

 アメリカ・EUは経済制裁を発動、国軍にもっとも影響力を持つ中国は静観。国軍はロシアとの関係強化

 懸命にデモをしているミャンマーの人たちを国際社会は見捨てるのか(懸念は表明するが、効果的な手は打てない)

 これまでモラルの高い抵抗運動をしてきたが、5月5日に「国民防衛隊」が設立され、「座して死を待つよりも戦う」となる可能性ある。少数民族の武装組織に「志願兵」として参加する若者が増えている

 日本政府はODAとしてインフラ整備など有償資金協力を毎年1,000億円以上投入。2013年には約4,000億円の円借款を帳消しに。国民の税金でインフラ整備を行う日本企業と国軍を儲けさせているのではという批判

 日本はミャンマーにパイプはあるが、それを活かせていない。ASEANの統計によると、ミャンマーの人たちが「世界平和や安全保障などへの貢献で信頼」しているのは、日本76.3%、アメリカ39.7%、EU37.2%、インド37.1%、中国12.1%で日本が圧倒的

 紛争仲介外交が必要。これまではスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、カナダ、スイスなどが熱心に取り組む

 今後の目標としては、「国軍による暴力の停止」「民主主義への平和的な回帰」「内戦の回避」



■田中英和さんインタビュー

Q.ご自身とミャンマーとのかかわりについて教えてください。

父親がミャンマーで仕事をしていて、母親がミャンマー人です。ミャンマーで生まれ育ち(小学校4年から3年間だけ日本で暮らしました)、高校からは日本です。

父親は今もミャンマーに住んでいて、旅行会社の仕事をしています。

私自身も今年の9月、ODAで主にインフラ整備をする企業に入社する予定で、ミャンマーに派遣されるはずでしたが、情勢的に不透明になってきました。



Q.ミャンマーの今の状況はどうですか?

コロナまでは「アジアの最後の秘境」的な位置づけで、観光客も増え、日本企業もたくさん進出していました。

ロヒンギャ難民の問題もありましたが、「あくまで一部の問題」のような位置づけだったと思います。

ロヒンギャの方がインタビューで、「私たちはずっと軍から弾圧を受けてきた」と答えていましたが、それがすべてのミャンマー国民の問題になったのが今回だと言えます。



Q.田中さん自体はどんなアクションをしているのですか?

軍は不都合な真実が外部に出ないように、インターネットも定期的に遮断してます。「Z世代*」によって現政権が覆されることを怖れているのでしょう。

日本にいてできることは限られていますが、私はインスタで情報を発信したり、現地支援のための募金活動を紹介したりしています。ネットを見ればいくらでも情報はありますが、身近な人から言われた方が伝わると思います。IVUSAの同期のメンバーからも、「身近な問題だと認識できた」と言われることがありました。


もちろん政治的な主張を入れるのはリスクもあるので、どう折り合いをつけていくかが重要です。

私も父親やいとこがまだミャンマーにいますし、生命の危険もある中で暮らしているという意味で「自分ごと」ですが、皆さんが自分ごとにするのは難しいかもしれません。

ただ歴史をふり返れば、無関心であったことで大きな代償を払ったことは大きいのです。例えば、1994年に大虐殺が起きたルワンダとかもそうでしょう。民族の対立や軍事政権という点で今のミャンマーと共通していることも多いです。だからこそ、目を向け続けることが必要だと思います。


*Z世代:1990年後半頃から2012年頃に生まれた世代を指し、デジタルネイティブであり、SNSネイティブ、さらにスマホネイティブでもあるといった特徴を持つ


Q.最後にIVUSAの学生にメッセージをお願いします

皆さんにお伝えしたいことは、是非IVUSAを活かして、国内外問わず様々な問題に目を向けてもらいたいということです。自分一人の関心というものは偏ってしまいがちですが、多くの仲間がいるIVUSAでは多種多様な関心ごとに触れる機会、シェアする機会が多く、私もそこから様々なことを学びました。


だからこそ皆さんには学生のうちに、そのような恵まれた機会を活かして欲しいと思います。現在コロナ禍で、多くの方々が家にいる時間、そしてSNSに触れる時間が多くなったのではないかと思います。


ゆえにこの状況は、今まで知らなかったことを知って、それを身の回りの知り合いに拡散できる時間だと捉えております。これを機に多くの方にミャンマー問題に関心をもっていただけると嬉しいです。



▶田中さんのInstagramはこちら
(ストーリーズで情報発信中です)

https://www.instagram.com/hideocroxx/



この記事を書いた人

理事・事務局員 伊藤 章

IVUSAの中では管理業務一般と、広報や社会理解学習のプログラム作りをする係。最近は、海ゴミ問題のキャンペーン「Youth for the Blue」も担当




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