琵琶湖では、2019年から「全層循環」という現象が起こっていないことが問題になっています。
■“全層循環”とは何か?
全層循環とは、水温の温度差によって「酸素を多く含む表層の水」と「低層の水」とが混ざり合い、低層に十分な酸素が供給される現象のことです。
【参照:京都新聞の記事】
皆さんご存知のように、
・暖かい水は軽い
・冷たい水は重たい
のです。
冬場の気温の低下によって琵琶湖の表層の温度が下がることや、山に積もった雪が雪解け水として山から湖に流れ込むことなどによって、冷たい水が沈下して低層の水と入れ替わり、低層に一年分の酸素を供給することができます。 全層循環の一言でわかりやすく言うと「琵琶湖の深呼吸」と呼ぶそうです。
■2019年に観測史上初めて、琵琶湖で全層循環が確認できなかった
県琵琶湖環境科学センターが1979年に観測を始めてから、全層循環が起こらなかった年はこれまでなかったようですが、2019年・2020年と2年連続で全層循環が確認できなかったようです。
2019年は特に、豪雪地帯ですら雪がほとんど降らず、スキー場は例年よりオープンが遅れ、シーズンを終えるのも例年より早いところが多かった、というニュースをよく見かけました。
雪がほとんど降らなかったのは滋賀県も同じで、それに伴い雪解け水もほとんどなかったようです。雪解け水がなければ、冷たい水が琵琶湖に流れ出ず、全層循環が起こらない状況を助長してしまいます。
■生態系への影響
県の発表によると、今のところ湖底生物への影響は確認できていないようですが、「生きるために必要な酸素が湖からなくなっていく」という状況が続いてしまうと、いずれ生態系に大きな影響が出てくるかもしれません。
■最新のニュース
2021年2月2日の記事によると、3年ぶりに琵琶湖で全層循環が確認できたようです。(今冬の冷え込みや季節風の影響) 長期間の酸素不足の影響が残っている可能性もあるようですが、一安心ですね。
2021年2月2日(京都新聞)
今回の事例のように、地球温暖化によって目に見える形で直接的な影響はなくても、「地球温暖化→雪が降らない→湖の水が混ざらない→水中の酸素量が低下→生物への影響」のように、連鎖的に色々なところに影響を及ぼしている可能性が考えられますので、ぜひ他のところにもアンテナを張ってみてください。
【参考記事】
http://www.shigahochi.co.jp/info.php?type=article&id=A0029150
2019年5月30日(滋賀報知新聞)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/205595
2020年4月2日(京都新聞)
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1225178
2020年12月15日(福井新聞)
この記事を書いた人
理事・事務局員 伊藤 章
IVUSAの中では管理業務一般と、広報や社会理解学習のプログラム作りをする係。最近は、海ゴミ問題のキャンペーン「Youth for the Blue」も担当
0コメント