7月1日から始まったレジ袋有料化は、私たちの生活に大きな影響を与えています。マイバックを忘れてスーパーに行き、有料レジ袋を買うと「あの人、環境意識低そう」と後ろ指さされるのではと、買った弁当とコロッケを手に持って事務所まで戻る道中、別の意味で恥ずかしい思いをする今日この頃です。
さて、このレジ袋有料化という施策に関しては賛否両論が結構あるので、今回はその論点整理をしてみます。
まず基本的なことから。ゴミ問題の解決には、いわゆる「3R」が重要ですが、この政策は「Reduce(リデュース)」にあたります。2019年12月に経済産業省と環境省が出した「プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン」には以下のように書かれています(下線は引用者)。
「プラスチックは短期間で経済社会に浸透し、我々の生活に利便性と恩恵をもたらしてきた。一方で、資源・廃棄物制約や海洋ごみ問題、地球温暖化といった、生活環境や国民経済を脅かす地球規模の課題が一層深刻さを増しており、これらに対応しながらプラスチック資源をより有効に活用する必要が高まっている。こうした背景を踏まえて 2019年5月に政府は「プラスチック資源循環戦略」を制定し、その重点戦略の1つとしてリデュース等の徹底を位置づけ、その取組の一環として「レジ袋有料化義務化(無料配布禁止等)」を通じて消費者のライフスタイル変革を促すこととした。 」
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/document/guideline.pdf
これだけ見ると、「結構な政策じゃないか、ドンドンやれ」と思うかもしれませんが、実際には以下のような批判があります。
1.マイバックは不潔じゃないか
新型コロナウイルス感染拡大の予防が求められる中、レジ袋を使った方が衛生的によくないのではという疑問。プラスチックのレジ袋を禁止していたカリフォルニア州が今年の4月からレジ袋を解禁したこともあり、「コロナの今、やるべきなの?」という意見です。
皆さん、マイバックはどれくらいの頻度で洗濯していますか?
2.なぜレジ袋だけなんだ?
レジ袋を作っている業界からしたらこの施策はたまったものではありません。
レジ袋の原型を日本で初めて開発したとされる中川製袋化工の中川兼一社長は次のように憤っています(朝日新聞7月1日付)。
「なぜ、まずレジ袋なのか根拠を示してほしい。日本の廃プラの排出量は年900万トン。うち400万トンが容器の包装で、レジ袋はその中の20万トンにすぎない。政府は環境対策の大目玉としてレジ袋の有料化に踏み切ったが、残りの380万トンはどうするのか。議論はほとんど進んでいない」。
「レジ袋がどれだけ環境に負荷を与えているか検証したうえで、環境政策を進めてほしい。ペットボトルや使い捨ての弁当箱を規制した方が、よほど廃プラは減る。大企業の食品や飲料メーカーではなく、私たちのような弱小企業をターゲットにした。環境対策のスケープゴートにされた気がしてしようがない。環境省の職員も私にこう言いました。レジ袋は身近で国民にわかりやすいんですと」。
日本ポリオレフィンフィルム工業組合のステートメントがこちらです。悲痛な気持ちが綴られていて胸が苦しくなります。
3.そもそも効果があるのか?
これもよく言われることですが、レジ袋はポリエチレンからできており、ポリエチレンは石油精製時に必ず発生する副産物なので、レジ袋を使わなくても産出されてしまい、もともとは捨てるはずのものでした。ちょうど廃材から割りばしを作るようなものですね。 逆に石油由来の素材のマイバッグを使うと、石油の消費が増える可能性もあるわけです。
また、そもそも海のプラスチックごみのうち、ポリ袋は0.3%です。もちろんそれでも削減することに意味はありますが、「レジ袋をやめれば、プラごみ問題は解決する」というような単純なものではないのも事実です。
参照:https://style.nikkei.com/article/DGXZZO46410530R20C19A6000000/
その他にも、「万引きしやすくなるんじゃね?」「小泉環境大臣のパフォーマンスだろ」といった批判もあります。
個人的な意見を言えば、そもそも今回の施策は「ライフスタイルを見直すきっかけとする」ことが目的ですが、これはすべての批判に一見答えたことになるパワーワードです。
ただ、「ライフスタイルの変化(行動変容)」という成果をどうやって評価するのか気になりました。
しかし、世界の趨勢は脱プラスチックに向かっているのも事実(トランプ政権のアメリカは前向きとは言えませんが…)。今回のレジ袋有料化が世界に向けた「アリバイ作り」という側面は確かにあるでしょう。
ただ、「大量生産・大量消費・大量廃棄」を前提した社会から、循環型で持続可能な社会に転換していくことは環境保護活動の本質であり、そのアクションの一歩としてレジ袋有料化をポジティブに捉えていったらいいのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、レジ袋を削減しても問題がすべて解決するわけではなく、より俯瞰してこの問題の全体像を学んでいく必要があります。
IVUSAでは現在、「Youth for the Blue」というキャンペーンを実施しており、その一環で海ゴミ問題に関するウェビナーを開催します。興味のある方はぜひご参加ください。
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この記事を書いた人
理事・事務局員 伊藤 章
IVUSAの中では管理業務一般と、広報や社会理解学習のプログラム作りをする係。最近は、海ゴミ問題のキャンペーン「Youth for the Blue」も担当
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