Social SalonオンラインVol.2 〝発達障害“から考える、共に生きる社会

社会課題について身近に知り、感じ、考えるイベント、Social Salon。2020年8月よりオンラインでの開催をスタートさせました!

オンライン第二弾となる今回は、2020年9月20日(日)16:00〜19:00開催しました。IVUSA会員12名、一般参加者13名と、ゲスト・スタッフ含め計30名を越える方々との学びの時間となりました。 


今回のテーマは、「“発達障害“から考える、共に生きる社会」。



ゲストスピーカーとしてお越しいただいたのは、こちらのお二人。 


主宰の湯田による、Social Salonや場についての説明などの後、ゲストのお話から始まります。



▼Social Salonとは  



【本編の前に…】

今回のテーマである、「発達障害」とは?

もし言葉自体をあまり聞いたことがないという方は、一度こちらのサイトをご覧いただくと、より内容への理解が深まるかもしれません。よろしければ、ご覧ください。 


▼厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」Webサイト


 


■1人目のゲスト・塚原さんのお話

塚原望さんは、療育やクリニック等で心理相談を行われており、主に教育・心理の視点から、「発達障害とは何か?」「“障害”は、どこにあるのか?」「共に生きるためには?」についてお話いただきました。 


初めに前提として、発達障害は「神経」(脳機能)に関わる障害であり、“努力不足”や“怠けている”わけではないことや、文科省も個別最適化された学びの実現を目指すことを明示しており、国としても、多様性との向き合い方が課題となっていることをお聞きしました。





そこから、

「授業中に立ち歩いてしまう子」は、なぜそうなると思うか? 

という例と共に、「障害」はどこにおこるのかついて、お話を聞きながら考えました。 この記事を読んでいる皆さんも、ぜひ一緒に考えてみてください。


塚原さんからは、スライドにある様に、「個人」だけ「環境」だけでなく、両者の相互作用により「障害」は生じるので、双方に対する働きかけを考えていく必要がある、とのお話を伺いました。



例えば、「立ち歩いてしまう」原因の一つに、「黒板の文字が写せない」という理由があったとします。

しかし、実は、学校の授業場面でも多く必要となる「黒板の文字を写す」という作業一つの中に、以下のような複数の動作・スキルが含まれていて、そのどれか一つができないだけで、「黒板を写す」ことに困難が生じるので、どこに原因があるのか、細分化して理解をしていく必要があります。 




最後に、「共に生きる」ために大切なことを、お話いただきました。





■2人目のゲスト・伊藤さんのお話

続いての伊藤さんは、精神障害者向け施設での相談員を経て、専門職・精神保健福祉士として行政機関(保健所)で相談員として働かれてきました。現場と行政の双方の立場のご経験を通した中で見えてきた、行政の仕組みや課題についてお話いただきました。  


▼精神保健福祉士とは?(日本精神保健福祉士協会Webサイト)

精神保健福祉士について

■精神保健福祉士(PSW)とは  ■精神保健福祉士の職場  ■精神保健福祉士の仕事  ■精神保健福祉士登録者数  ■教育カリキュラム  ■精神保健福祉士法(外部リンク)  精神保健福祉士とは、1997年に誕生した精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格です。 21世紀はこころの時代と言われています。多様な価値観が錯綜する時代にあって、こころのあり様は私たちがもっとも関心を寄せる問題の一つとなっています。 特に、わが国では、たまたまこころの病を負ったことで、さまざまな障害を抱えた人々(精神障害者)に対する社会復帰や社会参加支援の取り組みは、先進諸国の中で制度的に著しく立ち遅れた状況が長年続いていました。近年になり、関係法の改正などにより、ようやく精神障害者も私たちと同じ一市民として地域社会で暮らすための基盤整備が図られることとなりました。 精神保健福祉士は、精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)という名称で1950年代より精神科医療機関を中心に医療チームの一員として導入された歴史のある専門職です。社会福祉学を学問的基盤として、精神障害者の抱える生活問題や社会問題の解決のための援助や、社会参加に向けての支援活動を通して、その人らしいライフスタイルの獲得を目標としています。 さらに、高ストレス社会といわれる現代にあって、広く国民の精神保健保持に資するために、医療、保健、そして福祉にまたがる領域で活躍する精神保健福祉士の役割はますます重要になってきています。 医療機関で精神保健福祉士が担う業務は、単科の精神科病院、総合病院の精神科、精神科診療所、医療機関併設のデイケアなど、配属先によって違います。しかし、精神障害者の生活を支援する立場であり、医療と地域生活の橋渡しをすること、常に権利擁護の視点を持つこと、医療機関にあっても治療を担うのではないことは共通しています。 これらの活動に関連して、主治医、看護師、作業療法士や臨床心理士など、機関内の他職種とのチーム医療を展開します。精神保健福祉士法には他職種との連携を保つことが義務づけられています(精神保健福祉士法第41条)。 なお、精神保健福祉士は医療職ではありませんので、医師の指示によって業務を行うものではありません。ただし、「主治医がいれば、その指導を受けること」も精神保健

www.japsw.or.jp


 精神保健福祉士の職場のフィールドは、下記のように多岐に渡りますが、伊藤さんはこれまで、左下・赤色の「生活支援グループ」の「グループホーム・ケアホーム」での現場のお仕事を経て、右上・オレンジ色の「福祉行政機関」の「自治体・保健所」にて働かれていました。



続いて、法制度における発達障害の位置付けについて、お話いただきました。 

下の図の様に身体障害者・知的障害者・精神障害者それぞれの数と、障害者手帳所持数を比較した際、とりわけ精神障害者は、人数に対して手帳の所持者が少なくなっています。



 



障害者手帳を保持することで、公共料金の割引や助成などが受けられるなどメリットもありますが、そのようなメリットよりも、手帳を持つことで「社会の目が気になる」などの理由から、手帳を保持することに抵抗を持つ精神障害を持つ方が多くいらっしゃる現状もある、と言うお話を聞きました。 



【「発達障害」と障害者手帳について 】

「発達障害」は、2000年以降、診断が増えてきており、身体障害・知的障害・精神障害に続く「第4の障害」とされ、これまでの3つの障害の支援制度に後から組み込まれる形となり、発達障害“専用”の手帳も存在していないそうです。


2010年に障害者自立支援法が改正され、精神障害者の中に発達障害者が含まれると明記されるまでは、過去にうつなどの二次障害がなければ、手帳をもらうことが出来ませんでした


2010年以降は、国の方針も明確になり、二次障害の有無に関わらず手帳を申請出来るようになりましたが、「発達障害」を精神障害に含めるべきか、新たな区分を作るべきかについては、様々な議論があります。 




ラストは、恒例の“対話TIME”。

お2人のお話を元に、さまざまな問いについて、グループに分かれ、自分の意見を言い合いながら、考え、語ります。 


問い① ゲストのお話を踏まえて、これまでの自分の経験を振り返って、 自分自身、もしくは周りの人に、発達障害の傾向が当てはまるかも… というコトや場面は、ありますか? 
その時の困り感や課題は、どんなコトだったでしょう? 


問い② 理想の、「共生社会」って、どんな社会でしょう? それを妨げているものは、何でしょう? 


問い③ 1.で思い出した状況に、今の自分が遭遇したら、どうしますか? どんなことが出来そうですか? 人と接する時に、“自分”は、どう在りたいですか…?  


これを読んでいる皆さんも、ぜひ、考えてみてください。


 ―「失敗が許されない」社会って生きづらい…。失敗を許しあえる社会や、自分のいろんな面を、いろんなところで許容してもらえたら良いし、いろんなコミュニティと接点があることは、大事なのかもしれない。

 ―伝え方を間違えると、逆にレッテルになってしまう可能性があり、分断に加担してしまうことになる可能性があるので、今日知ったことを自分自身が伝えていく際に、伝え方に気をつけてゆきたい。 

―「障害」を受け止められないことも、「障害」なのではないか?「障害」「障害じゃない」「普通」「普通じゃない」それらの境目って一体なんなのか?そもそも、存在するのか? 

―「障害」ではなく、「その人自身」を見ることが、大切なのではないか。

 …などなど、様々な視点が混ざり合い、様々な気づきが生まれました。 


ゲストの伊藤さんのお話にあった、障害者手帳を申請しない人の理由には、「社会の目が気になる」という言葉。その「社会の目」を作っているのは、私たち一人一人だと気付き、ハッとさせられました。 


どんな「社会」になったら良いのか?私たちに出来ることは何か? 

私自身、考え続け、動き続けていきたいと思うと同時に、Social Salonが、ふと気付き立ち止まるきっかけの場となれたら、幸いです。 



 ゲストのお二人、参加者の皆さん、本当に有難うございました!   




【ゲストからのオススメ情報】 

▼発達障害情報・支援センター>発達障害を理解する 




▼文部科学省(2012) 通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/__icsFiles/afieldfile/2012/12/10/1328729_01.pdf


▼「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について 

「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害の分類法として、2001年5月、世界保健機関(WHO)総会において採択された。この特徴は、これまでのWHO国際障害分類(ICIDH)がマイナス面を分類するという考え方が中心であったのに対し、ICFは、生活機能というプラス面からみるように視点を転換し、さらに環境因子等の観点を加えたことである。  厚生労働省では、ICFの考え方の普及及び多方面で活用されることを目的として、ICFの日本語訳である「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」を作成し、厚生労働省ホームページ上での公表(8月5日より掲載予定)することとした。 1 ICFについて 2 日本語版「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」の作成について 3 今後のICFの活用について 4 ホームページのアドレス   https://www.mhlw.go.jp/topics/index.html#syakai < 参考 : ICFの概念 > 第1部:生活機能と障害 第2部:背景因子 構成要素 心身機能・身体構造 活動・参加 環境因子 個人因子 領域 心身機能身体構造 生活・人生領域(課題,行為) 生活機能と障害への外的影響 生活機能と障害への内的影響 構成概念 心身機能の変化(生理的)身体構造の変化(解剖学的) 能力標準的環境におる課題の遂行実行状況現在の環境における課題の遂行 物的環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境の特徴がもつ促進的あるいは阻害的な影響力 個人的な特徴の影響力 肯定的側面 機能的・構造的統合性 活動参加 促進因子 非該当 生活機能 否定的側面 機能障害(構造障害を含む) 活動制限参加制約 阻害因子 非該当 障害 ICF 序論 1. 背景  この本には国際生活機能分類:国際障害分類改定版(International Classification of Functioning, Disability and Health, ICF)を収めている1)。ICF分類の目的を一言でいうと,健康状況と健康関連状況を記述するための,統一的で標準的な言語と概

www.mhlw.go.jp

※障害(個人の生活機能)が個人要因と環境要因の相互作用により説明される、ということの補足となるものです。 


◆次回予告 

Social Salonオンラインvol.3 

“減災”ってなんだ?〜あなたなら、どうする!?災害リスクと、どう向き合うか〜 

日時:2020年10月31日(日)14:00〜17:00 



※本イベントは、IVUSA会員だけでなく、外部の方の参加も受け付けています。

※ 学生と社会人が、IVUSAの理念でもある、”共に生きる社会”に向けて対話を行う機会でもある、Social Salon in IVUSA。 


申し込みは、IVUSA会員はエントリーページから、

IVUSA会員以外の方は、以下peatixからのお申し込みとなります。 


この記事を書いた人 


IVUSA非常勤スタッフ 

湯田舞

IVUSAでは、フィリピンツアー通訳兼コーディネーター/減災プログラム化/社会課題を自分ゴトとして考える場”Social Salon in IVUSA”をやっています。IVUSAのOGではなく、大学時代は少林寺拳法ばっかりやってました。宜しくお願いします  



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